対談を行った武豊騎手(左)とロッテ吉井監督(撮影・宮地輝)

プロ野球・千葉ロッテマリーンズ吉井理人監督(59)と、ジョッキー生活39年目を迎えたJRAのレジェンド武豊騎手(55)の豪華“イケオジ”対談が実現した。後編は、勝負師としての話題が中心に。出会ってから30年、刺激しあい、互いに今もリスペクトする2人が、理想像や目標、今後への思いを語った。【取材・構成=下村琴葉、星夏穂】

   ◇   ◇   ◇

-吉井監督は馬主になったほどの競馬好き

吉井監督(以下、吉井) 豊君をめっちゃ応援してる。去年はドウデュースが頑張ってたので興奮した。特にG1とか、めっちゃ人がいるやん。ウイニングランは気持ちいい?

武豊騎手(以下、武) 勝たないとできないし、何万人に拍手で迎えられて、しかも馬とジョッキーだけなので。最高の時間ですね。

-武豊騎手が吉井監督を見て思うところは?

武 選手の時も見に行きましたが、1人でマウンドに立って投げている姿は、やっぱかっこいいなって思います。チームでやってるのをちょっとうらやましく思ったりもする。

-スポーツマンとして意見交換は?

武 昔はね、野球と競馬の話をよくしてましたね。選手の話とか、ジョッキーの話とか。あとは新聞記者への対応とかね(笑い)。

吉井 豊君は年齢を重ねても技術が全然落ちないっていうのは見ていてすごいなと思うし、どんなことをしてるんだろうな、と。そういう興味がありました。

-勝負師として大事にしていることは?

吉井 今は結構データ、データになってるけど、野性の勘がすごく正しい時があって、自分の勘はわりと信用してるかな。ジョッキーもそんな感じ?

武 結構、自分の勘とか感覚を大事にしたいなとは思います。

-頭脳派なイメージ

武 吉井さんはそうだと思いますね。

吉井 結構ね、試合中に感情の波があるけど、一生懸命抑えている。選手はやっぱり監督の顔色を見ている。パフォーマンスの足を引っ張るのは嫌なので。

武 理想の監督像とかあるんですか。

吉井 理想はやっぱりバレンタイン監督みたいに、ちょっと感情が出る方がかっこいいかなとは思いますけどね。なかなかできないですよね。

-武豊騎手はドウデュース産駒に乗るのが目標?

武 よく言われるんですよ。オーナー(松島正昭氏)も夢はドウデュースの子供で凱旋門賞と。

吉井 おお、だいぶ頑張らな。

武 よう考えたら(ドウデュース産駒のダービー出走は)一番早くて60歳の時になるし。楽しみとしてはありますよね。とことん乗りたいなと思ってますし、それがずっとできれば、それはジョッキーとしてすごく幸せなこと。

-吉井監督はどういう思いで現役の区切りを

吉井 未練たらたらでしたね。どんなレベルでもいいから野球をやりたいと思って探してたんですけど、43歳になる年の選手は取らないですよね。もう仕方なしで辞めた。できるもんならずっとやってたいんですよ。

-最後に今後への思いを

武 1つでも多く勝ちたいっていうのがずっとあるし、勝ちたいレースはいっぱいある。去年、横山典さんが56歳でダービーを勝たれて、よし俺もと思うところもあるし。やっぱり海外のビッグレース、凱旋門賞もいつか勝ちたいし、意気込んでますよ。

吉井 所有馬の2頭がしっかりレースできるようになって、豊君に乗ってもらえたらと思っています。野球は、また新しいチームになる。“1番人気”の(佐々木)朗希がいなくなっちゃったんで、そこをどうカバーするかをしっかり考えて、やっていきたいと思っています。

-また口取りで再会

武 その時がきたらうれしいな。(おわり)

◆吉井監督の所有馬 JRA初出走は16年フォーシーム(12着)。所有3頭目のマゼは19年1月に武豊騎手で逃げ切り、吉井監督にとってJRA初勝利となった。そのフォーシームの子リジン(牡6)は浦和競馬で5勝を挙げ、昨年3月の中央移籍初戦を勝利。現在はJRAのリジンと、浦和所属のヤバネ(牡3)の2頭を所有する。

◆2人の出会い 95年に共通の知人を通じて親交が始まった。吉井監督は「そんなん、もうスーパースターやから。ドキドキしていたよね」と振り返り、武豊騎手も「関西の方なんで、なんか話しやすいなと。僕の後輩とかもすごくかわいがっていただいたので」と懐かしむ。00年に吉井監督(当時投手)が東海岸のニューヨーク・メッツから、ナショナルリーグ西地区のコロラド・ロッキーズへ移籍。同年に武豊騎手が米西海岸に拠点を置き、米国で会う機会が増えたことでさらに仲を深めた。19年1月には、馬主である吉井監督の所有馬マゼに武豊騎手が騎乗し、勝利を挙げている。

◆ドウデュース 21年9月に武豊騎手とのコンビでデビュー。無傷3連勝で朝日杯FSを勝ってG1初制覇。翌年、3歳馬の頂点を決める日本ダービーでは、のちに“世界最強馬”となるイクイノックスを破って優勝した。23年には有馬記念、24年には天皇賞・秋、ジャパンCを制し、4年連続でJRA・G1・5勝を挙げた。引退レースの予定だった昨年の有馬記念は出走取り消しとなったが、24年度のJRA賞年度代表馬に輝いた。現在は種牡馬となり、初年度産駒は28年にデビュー予定。

◆吉井理人(よしい・まさと)1965年(昭40)4月20日、和歌山県生まれ。箕島から83年ドラフト2位で近鉄入団。88年最優秀救援投手。95年トレードでヤクルト移籍。97年オフにFAでメッツ入団。ロッキーズ、エクスポズを経て、03年オリックスで日本球界復帰。07年途中ロッテに移籍し同年引退。日米通算121勝129敗62セーブ、防御率4・14。08年から日本ハム投手コーチ。ソフトバンク、日本ハム、ロッテ、日本代表でコーチ、23年からロッテの監督を務め、ダルビッシュ有や大谷翔平、佐々木朗希らを育てる。187センチ、89キロ。右投げ右打ち。

◆武豊(たけ・ゆたか)1969年(昭44)3月15日、京都府生まれ。87年に騎手デビュー。88年菊花賞(スーパークリーク)でG1初制覇。22年にはドウデュースで史上最多6度目の日本ダービー制覇を果たした。JRAリーディングは史上最多の18回。最多勝利・最高勝率・最多賞金獲得の騎手大賞は9回受賞。JRA通算4559勝(28日現在)は歴代最多を更新中。うちG1・83勝。

情報提供元: 日刊スポーツ
記事名:「 【イケオジ対談】吉井理人×武豊、ドウデュース産駒「だいぶ頑張らな」「とことん乗りたい」/後編