【センバツ】6年ぶり出場の横浜・村田監督「新たな時代への1歩」“シン横浜”の挑戦が動き出す
<第97回選抜高校野球大会:選考委員会>◇24日
“シン横浜”の挑戦が動き出す。日本高野連は24日、第97回センバツ高校野球大会(3月18日~30日、甲子園)の選考委員会を開き、出場32校(一般選考枠29、神宮大会枠1、21世紀枠2)を決めた。
6年ぶり17度目出場の横浜(神奈川)は、97年明治神宮大会を日米通算170勝の松坂大輔氏(44)を擁して制して以来、27年ぶりに秋王者として乗り込む。技術だけでなく、心を通わせ、公式戦は15連勝中。松坂氏らが達成した4冠(神宮大会、春夏甲子園、国体=現国民スポーツ大会=)へ。伝説を作る春がくる。
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「村田! 村田!」片山大輔投手(2年)が手をたたき始めると、村田浩明監督(38)の周りに選手が集まり、胴上げのサプライズ。5回、宙に舞った村田監督は「関東大会も明治神宮大会でもやらなかったもんな。ありがとう!」と笑顔であいさつした。
シン横浜としての挑戦が始まる。村田監督は喜びに沸く選手たちを眺め、新チーム発足時を思い出していた。「このチームが始まったとき、勝ちたい、勝ちたいと思うのを止めたんです」。夏は4年連続、秋は3年連続で決勝に進出しながら、優勝を手にすることはできなかった。「何がダメなのか」を1から見直した。
これまで親交のあった競馬の松岡正海騎手の言葉が胸に響いた。「馬は話せないけど毎日見ていると、足が痛い、熱がある、走る気がないとわかる。信頼関係を作るのが大切」。新チームからは、選手と向き合いコミュニケーションを増やした。「監督との距離感や壁がなくなり、一緒に戦ってくれている。実感がありました」と阿部葉大主将(2年)。選手たちも自分の意見をはっきり口にするようになり、グラウンドはより活発な場に生まれ変わった。村田監督は試合での選手のちょっとした表情、動きにも目が届き、適材適所で選手を起用。選手たちもチャンスを求め、切磋琢磨(せっさたくま)した。
昨年12月には初めて「お笑い大会」も開催した。保護者も出席し、思い思いの芸を披露。阿部と奥村頼人投手(2年)は漫才を披露。優秀賞を獲得した。阿部は「大舞台でも恥ずかしがらずに話せるようになった。殻を破れたかな」と照れ笑いを浮かべた。
横浜の歴史を継承する。守備からリズムをつくり、緻密な野球で相手を圧倒する伝統の横浜野球に、選手との対話を大事にする村田野球が加わった。村田は「継承とは新たな横浜を作ること。きょうは新たな時代への1歩です」と力を込めた。明治神宮大会優勝後、チームは「己に克つ」をスローガンに掲げた。秋よりも、さらに強いチームになる。次の胴上げは甲子園の空の下だ。【保坂淑子】
◆24年明治神宮大会VTR 初戦、明徳義塾(高知)と対戦。1年生の最速150キロ右腕、織田翔希投手が2安打完封。準決勝の東洋大姫路(兵庫)戦ではタイブレーク延長11回、奥村頼人投手(2年)の左前適時打で2点勝ち越しに成功し粘り強く勝ちきった。広島商との決勝戦は前半4点にリードを奪うと、織田-奥村頼のリレーで反撃を振り切って優勝を飾った。
◆神宮大会枠 03年導入。明治神宮大会優勝校が所属する地区に出場枠1を割り当てる。今回は横浜が優勝し、関東・東京地区に1枠が加わった。