【高校サッカー】帝京15大会ぶり選手権「今年一番の試合」伝統と時代に沿ったスタイルで悲願
<高校サッカー選手権東京大会:帝京2-1国学院久我山>◇東京A決勝◇16日◇駒沢競技場
9度の全国優勝を誇る帝京が、東京A決勝で国学院久我山に2-1で逆転勝ちし、15大会ぶりに35度目となる冬の全国切符を手にした。高校サッカー界をけん引してきた名門も近年は低迷。15年に就任した日比威前監督(現順大監督)が立て直し、今季から指揮を執る藤倉寛監督が導いた。ともに帝京OB。伝統を引き継ぎつつ、時代に沿ったスタイルで悲願を成就させた。東京Bは昨年全国4強の堀越が延長戦の末、実践学園を3-2で破り、2大会連続6度目の出場を決めた。
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「シン帝京」が東京を制した。2年連続準決勝で敗れていた宿敵・国学院久我山を倒して全国への出場権を手にした。
前半18分に先制を許すも、同34分にエースFW森田晃(3年)のゴールで追いついた。拮抗(きっこう)した展開が続いたが、後半39分に途中出場のFW土屋裕豊(3年)がPKから決勝点。相手に主導権を握られる時間もあったが「帝京魂」をみせつけた。今季就任した藤倉監督は「内容とかではなく今年一番の試合だった」と選手たちをたたえた。
冬の全国出場は悲願だった。かつては名将・古沼貞雄氏(現矢板中央アドバイザー)が率いて6度の優勝。礒貝洋光、本田泰人、松波正信、中田浩二、田中達也ら数々のスターが高校サッカーを彩ってきた。しかし近年は苦しんだ。元日本代表MF稲垣祥(名古屋)らを擁した第88回大会以来15年間選手権の舞台から遠ざかった。黄金期は全国からトップクラスが集まったが最近はJクラブの下部組織に流れることが増えた。
現在もアドバイザーを務める日比前監督が復活の礎となった。フィジカルに頼るのではなく、パスをつなぐサッカースタイルを志向。スカウトにも力を入れ、徐々に「日比先生に誘ってもらったから」と選手も集まるように。18年度にプリンスリーグ関東に昇格を決め、22年には高校総体で準優勝するなど着実に強化を進めた。藤倉監督も「日比先生がやってきたことが間違っていなかったと証明できた」と「日比路線」を継承して結果につなげた。
ユニホームの左胸には過去の全国優勝回数を意味する9つの星が記されている。主将の砂押大翔(3年)は「入学してから全国優勝だけを目標に掲げて3年間生活している」。生まれ変わった伝統のカナリア軍団が「10個目の星」獲得に向けた挑戦権を得た。【佐藤成】