1996年7月、ブラジル戦の後半27分、決勝ゴールを決め喜ぶ、左2人目から伊東輝悦、路木龍次、鈴木秀人、遠藤彰弘。左端はロベルト・カルロス

J3アスルクラロ沼津の元日本代表MF伊東輝悦(50)が10月31日、今季限りでの現役引退を発表した。96年アトランタ五輪(オリンピック)で、日本がブラジルに勝利した「マイアミの奇跡」で決勝点。日本が初めてワールドカップ(W杯)に出場した98年フランス大会でも代表メンバー入りした。

◆マイアミの奇跡 96年7月21日、アトランタ五輪1次リーグD組第1戦はマイアミ・オレンジボウルで行われた。28年ぶりに五輪に出場した日本は、いきなり優勝候補筆頭のブラジルと対戦。一方的に押し込まれたが、後半27分にMF路木龍次のクロスにFW城彰二が走り込んでチャンスが生まれた。

GKジダとDFアウダイールが接触して転倒、中盤からペナルティーエリア内に進入していたMF伊東輝悦が、こぼれ球を右足で無人のゴールに流し込んだ。シュート数はブラジルの28本に対して日本は4本。GK川口能活が神がかり的なセーブを連発し、ベベット、リバウドらスター軍団にゴールを許さず、1-0で勝った。

まだW杯出場経験すらないアジアの国が王者ブラジルを倒したことは、世界的にも大ニュースとなった。徹底したスカウティングで実力差を判断し、守備的に臨んだ西野朗監督の策が見事に当たった。

当時の伊東は「99%チームメートがつくってくれた。僕は誰もいないゴールに入れただけ」と話していたが、ゴール前に当たり前のように顔を出し、結果を残した。

西野朗氏は後にその場面を振り返り「よくスプリント回数と言われるが、総数より大事なのは同時性。ブラジル戦のテル(伊東輝悦)のゴールは、(ボールを受けようとした城彰二に同調して)走っていたのは彼1人だった」と話していた。

情報提供元: 日刊スポーツ
記事名:「 伊東輝悦、マイアミの奇跡「僕は誰もいないゴールに入れただけ」でも「走っていたのはテルだけ」