今秋ドラフト候補の桐光学園・森駿太内野手

プロ野球ドラフト会議が24日に行われる。プロ志望届を提出した選手、ドラフト指名を待つ選手。吉報を待つグラウンドに、日刊スポーツの記者が思いを尋ねに向かった。

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桐光学園(神奈川)の森駿太内野手(3年)には忘れられない24時間がある。

今年7月16日、神奈川大会4回戦の川和戦が5回終了直後、雨天のため継続試合となった。森は相手の2年生左腕・浜岡にいい結果が出なかった。

スコアは0-0。中断直前に味方エースは打球を足に当て、翌日の試合再開、6回の攻撃は森からだ。身長188センチ、体重91センチの体格で高校通算48本塁打を誇る強打者は、不調だった。2カ月以上たって振り返る。

「映像を見直すと分かるんです。自分のスイングじゃなくて。前のめりになって、出たとこ勝負になっていました」

翌日は、そんな自分から試合が再開する。打てば勢いづくし、それこそ三振でもしたら…。苦笑いで当時を回想する。

校内で合宿を行っており家には帰らなかった。忘れもしない。

「ずーっと、バット持ってました。本当にずっと。部屋でも。学校に帰ってバッティング練習して、ご飯食べて、またティー打って、寝る前にも素振りして。バットと一緒に寝て」

指導者からは「期待してないから」との声もあった。言葉の裏にある“分かりやすい愛”が痛いほど突き刺さる。「みんな、少しでもプレッシャーを減らそうとしてくれたと思うんです。それも申し訳なくて」。

夜が明ける。決めた。初球を絶対に振る-。

「相手もかわすような投手じゃないんで。初球は絶対にストライクが来ると思ったので」

やや低めの直球。24時間の葛藤を経て、自分らしく振り抜いた。手元でしっかり引きつけたいい当たりだったものの、レフトのグラブに収まった。

「いい当たりでした。あれがスタンドインできるような選手にこれからならなくちゃいけないんだなと思います」

一時期はドラフト上位指名候補との評判もあった。結果を出せず、もしかしたら立場は少し変わったかもしれない。でも臆せずにプロ志望届を出した。神奈川県内ではイの一番に。

「やり通したいので。結果や内容を見て目標を変えるのって、自分の中ではダサいなと思って。そんな選手でいいのかって。そこで夢変えるようなヤツが4年後にプロになれるかって。多分なれない。逃げちゃつかめないから、ちゃんと勝負して」

緊張はするけれど堂々と待つ。何より大事にしたいことは。「ドラフト会議が終わって、その結果で行動を変えるような選手にはなりたくないです」。大きな体にぎゅっと詰まった超高校級の責任感と、1本通った太い芯。6球団のスカウトが調査書を持って訪れても、まるで動じず、強烈な弾道を飛ばしている。【金子真仁】

情報提供元: 日刊スポーツ
記事名:「 【ドラフト吉報待つ】高校通算48発の桐光学園・森駿太が乗り越えた「忘れられない24時間」