川崎F対新潟 前半、懸命のディフェンスを見せる新潟舞行龍(右)(撮影・水谷安孝)

<YBCルヴァンカップ:川崎F0-2新潟>◇13日◇準決勝第2戦◇U等々力

アルビレックス新潟が1999年(平11)のJリーグ参入以来、クラブ初のタイトル獲得に王手をかけた。

敵地での第2戦で川崎フロンターレに2-0で完勝。2戦合計6-1で初の決勝進出を果たした。

前半31分に左MF小見洋太(22)が先制点。後半44分には途中出場のFW太田修介(28)がダメ押し点を決めた。主将マークを巻いてフル出場のDF舞行龍ジェームズ(36)がけん引し、相手の強力攻撃陣を完封。まずは、9年前の準決勝敗退の悔しさを晴らした。

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後半追加タイム3分が過ぎ、試合終了のホイッスルが鳴ると、舞行龍は右手人さし指をクルクルと回しながらホッとした表情を見せた。そして、チームメート全員を力強く抱きしめた。「疲れた(笑い)。相手、(会場の)雰囲気にのまれないように、と伝えた。試合の入りは大事になる。最後はサポーターの声援が力になった」と敵地までかけつけてくれた12人目の選手に感謝した。

36歳。G大阪が相手だった9年前の準決勝も知っている。第1戦に2-1で先勝したが、第2戦で0-2。逆転され、初の決勝進出を阻まれていた。2試合とも先発出場だった舞行龍は「同じ失敗は繰り返したくない」と誓っていた。来季加入が内定している特別指定選手のDF稲村隼翔(22=東洋大4年)と最終ラインの中央でコンビを組み、完封勝ちに導いた。

この日の相手は17~19年途中まで在籍した古巣だった。ケガもあり出場は多くなかったが、元日本代表MF中村憲剛氏(43)やこの日もマッチアップしたMF家長昭博(38)らと過ごした日々は記憶と体に刻まれ、今のプレースタイルにつながっている。敵地のサポーターからも拍手が送られ、「活躍して決勝に進出できたことで恩返しが出来たかな」とほほえんだ。

プロ生活のスタートは順風満帆ではなかった。東京・成立学園高から08年に新潟入り。しかし翌年以降は北信越リーグのJAPANサッカーカレッジ(09年)、当時JFLの金沢(10、11年)、J2長崎(12、13年)と期限付き移籍を繰り返した。努力を続け、13年途中に新潟に復帰すると主力に定着。川崎Fでもプレーし、19年8月にタイトルを取るため、愛着のある新潟に戻ってきて、この日1つの歴史をつくった。

ただ、まだ通過点。初の決勝進出で、クラブ初のJリーグタイトルが見えてきた。決勝の相手は名古屋に決まった。「なかなかないチャンス。非常に楽しみ。勝ってサポーターと新しい景色が見たい」。うれし涙は、11月2日に国立のピッチで、日本一になって流す。【小林忠】

■MF小見(前半31分に右足のつま先で先制点)「FWでプロ入りしている。ゴールという部分にプライドを持っている。冷静に打てた」

■FW太田(終了間際に追加点)「トラップが長くなったが、しっかりと流し込めた」

■GK阿部(下部組織育ち。悲願の初タイトルへ)「チーム、そして自分の価値を示すためにも必ず優勝する」

情報提供元: 日刊スポーツ
記事名:「 【ルヴァン杯】9年前の悔しさ知る新潟DF舞行龍ジェームズが決勝導く クラブ初タイトルに王手