DeNA関根大気(2024年7月撮影)

DeNA関根大気外野手(29)が誹謗(ひぼう)中傷問題に一石を投じる。11日、4月から行ってきた一連の裁判の結果や受け取った示談金の金額を公開することに決めた。これによって誹謗(ひぼう)中傷の実態が明らかになるとともに、加害者がどれほどのペナルティーを負うことになるのかも浮き彫りとなった。

事の発端はSNSで心を痛めた同僚への思いだった。1人の後輩が悪質な誹謗(ひぼう)中傷を受けてSNSのアプリをホーム画面から削除。関根は問題意識を感じるとともに「何かできることはないか」と考えるようになった。

そんな折、4月に試合中の自身のプレーをきっかけに関根のSNSアカウントに「あなたの家族全員が事故死で死んで欲しい」などの悪質な誹謗(ひぼう)中傷が多数、届いた。選手会や弁護士とも相談を重ねた上で、法的措置をとることに決めた。発信者情報の開示請求申し立てを行い、8月には、X(旧ツイッター)の関根本人のアカウントで情報開示命令申立が認められた旨と開示仮処分命令が出された投稿のアカウント名なども公開。リポストは2・5万以上と瞬く間に拡散された。「ゴミ」「消えろ」などの文言が入った投稿が誹謗(ひぼう)中傷に該当することも世間に認知されるきっかけとなった。

そして今回、開示手続きと示談交渉の末にすでに5件の示談が成立。示談金は1人最大90万円で、5人で総額415万円だった。その他の投稿者との間でも、開示手続き中のものや刑事告訴を検討しているものがあり、総額はさらに大きくなる見込み。刑事事件については、当該投稿者には前科がつき、懲役、禁錮、罰金等の刑に処される可能性もある。

関根は一連の流れを全て、世間に公開することにした。理由は明確で「誹謗(ひぼう)中傷の実態がどんなものか、そして誹謗(ひぼう)中傷をした人がどうなるのかを世の中の方たちに認知して欲しかった。その中で、中傷に苦しむ人も、一時的な感情で中傷をしてしまって後悔する人も減らしたい」と説明した。「○○、ゴミかよ」。そんな何げない投稿1つで、100万円近い示談金が必要になってしまう。加害者も被害者も、ともに減らしたいという思いだった。実際に示談書の中には、その願いを込めて、プロ野球選手その他一般人に対し、ソーシャルメディアその他の手段を問わず、誹謗(ひぼう)中傷を2度と行わないことを約束してもらっている。

今回の示談金として得られた金額から、裁判費用と開示請求に必要となった資金を引いた総額は全て、こども食堂活動を支援する認定NPO法人の「むすびえ」に寄付する。同法人は各地域のこども食堂とそれを支援する企業と団体をつなぐ活動をしており、関根もその活動に共感。こどもたちへの栄養バランスの取れた食事の提供や地域の居場所作りに使われることになる。

関根は「これを機に、誹謗(ひぼう)中傷の実態と誹謗(ひぼう)中傷をしたらどうなるのかを、多くの人に知ってもらえればと思います」と願った。スポーツ界だけでなく、社会全体の問題となっているSNSでの誹謗(ひぼう)中傷問題。ユーザー1人1人が、SNSとの向き合い方をいま一度、考えてみる必要がありそうだ。【小早川宗一郎】

情報提供元: 日刊スポーツ
記事名:「 【DeNA】関根大気が誹謗中傷問題に一石「○○、ゴミかよ」何気ない投稿が100万円近い示談金に