パドレスのダルビッシュ有は7回、ドジャースのラックスを打ち取ると喜びのしぐさを見せた(AP)

【ロサンゼルス(米カリフォルニア州)6日(日本時間7日)=四竈衛、斎藤庸裕】パドレスのダルビッシュ有投手(38)が、冷静かつ貫禄十分の投球で、絶好調だったドジャース大谷翔平投手(30)を3打数無安打と完璧に封じた。ナ・リーグ地区シリーズ(5回戦制)の第2戦に先発し、7回3安打1失点と好投。ド軍との対戦成績を1勝1敗とタイに戻し、自身もポストシーズン通算5勝目をマークした。第3戦は8日(同9日)、舞台をサンディエゴへ移して行われる。

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今季最多の5万4119人のファンで埋まる敵地が騒然となり、警備員10数人がグラウンドに居並んだ。それでもマウンド上のダルビッシュは変わった様子もなく、目の前の光景を冷静に見つめていた。

4-1と3点リードして迎えた7回裏。守備に就こうとした左翼手プロファーに観客席からボールが投げ込まれ、さらに右翼後方にはペットボトルなどが散乱する異様な事態となった。

審判団が協議し、事態が収束するまで約10分間。その間、キャッチボールで肩を慣らしつつも、ダルビッシュが集中力を切らすことはなかった。「あんなことは経験したことがない。とにかく点を与えないこと。流れが変わってしまうかもしれないので、そこは意識しました」。先頭にこそ四球を与えたものの、動じることなく後続を仕留めて無失点。余力十分の82球で役目を終え、救援陣へバトンを託した。

終始、冷静さを保ちながら、勝利へのカギとなる「大谷封じ」も完璧に遂行した。初回は内角攻めでカウントを整え、最後は外角からのスライダーで空振り三振。3回はスプリットでバットの芯を外して一ゴロ、6回には縦割れのカーブでタイミングを崩して投ゴロ。「反応を見ながらですけど、セットに入って長く球を持ったり、足を上げている時間をちょっと変えたりとか、そういう工夫はしてました」。絶好調の大谷のかすかな動きも見逃さず、6球種を内外角へちりばめて手玉に取った。

本来、登板前は緊張するタイプながらも、この日は平常心でマウンドへ向かった。ド軍に在籍した経験もあり、互いに手の内を知り尽くした同士の心理戦。過去のカットボール、スイーパー主体の横変化以上に、この日はスプリット、縦のスライダー、大きく割れるカーブと縦変化の球種を多投。打者目線を翻弄(ほんろう)する熟練の投球術で1失点にまとめた。

「今日、起きてからまったく緊張もなかったですし、落ち着いてました。さすがに38歳なんで、ガチガチに緊張はしてられないというか…」

終わってみれば、大谷、ベッツ、フリーマンのMVPトリオを計8打数無安打。大谷の前に走者を出さない完璧なゲームメークで、シリーズの流れを変えた。

22年、ド軍相手の同シリーズでも初戦を落としながら、ダルビッシュが第2戦を制し、そのまま3連勝で突破した。「クラブハウスの雰囲気も良かった。いい方向に行けばいいと思っています」。大谷とド軍の勢いを止めたベテランの言葉の端々に、幾多の経験と貫禄が込められていた。

▼38歳と51日のダルビッシュが好投。ポストシーズン(PS)で7回以上を投げて1失点以下は、14年ナ・リーグ地区シリーズ第2戦(ナショナルズ戦)で39歳82日のティム・ハドソン(ジャイアンツ)が7回1/3を1失点に抑えて以来、10年ぶりの年長記録。

▼ダルビッシュがポストシーズン(PS)通算5勝目。日本人投手では田中将大(5勝)に並ぶ通算最多勝利となった。過去の日本人投手では11年斎藤隆が41歳、13年上原浩治が38歳で勝っているが、ともに救援登板だった。38歳での先発勝利は、ダルビッシュ自身が22年に勝った36歳を更新するPSの日本人最年長。

▼ダルビッシュと大谷が対戦。ポストシーズンで日本選手の投打対決は、20年の田中(ヤンキース)対筒香(レイズ)以来4年ぶり。1試合3打席以上の対戦は07年の松坂(レッドソックス)対松井稼(ロッキーズ)、08年の松坂(同)対岩村(レイズ)=2度に次いで4度目だが、打者の3打席無安打は初めて。

情報提供元: 日刊スポーツ
記事名:「 ダルビッシュが大谷封じ7回1失点快投「さすがに38歳なんで…」平常心で1勝1敗のタイに戻す