東京Vでスカウトを担当する新潟市出身の安さん(東京ヴェルディ提供)

新潟市出身の安竜鎮(あん・りょんぢん)氏(41)が、サッカーのJ1リーグで6位を走る東京Vのスカウト担当として奔走している。全国を飛び回りながら大学生、高校生を現地視察。プロとして輝く可能性を秘めた原石を発掘する仕事は、チームの戦術や成績を左右する大きな役割を担う。選手をチェックする際の着眼点や重視するポイント、仕事のやりがい、新潟への思いなどを語った。【取材、構成=小林忠】

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-スカウトの仕事とは

「全国に足を運んで実際に選手のプレーを見て、本人や指導者と話をしたり。1度で『これは』と思う時もありますが、じっくり見極めてから練習参加の打診をする。練習場に行く機会も多いです」

-どんな着眼点で選手を見る

「攻守における基礎技術、プレー強度、走力、粗削りでも特長を適切なタイミングで使う選手には目がいきます。あとは試合前のアップや、練習場での振る舞いもよく見ます。日々、100%の力が出せないとプロではやっていけない。サッカーは団体競技。向上心や競争心がないとチーム全体に影響が出る。そこは重要視しています」

-選手を見ること以外に大切にしていること

「選手、指導者とのコミュニケーションです。対話することで、対象選手の見るだけでは分からない部分がクリアになったり、考えが分かったりします。関東だけでなく、地方にも逸材がいるので、チャンスを逃さないようにアンテナは張っています」

-獲得して終わりではない

「選手たちは悩んでいることも多い。スカウトという立場なのでコミュニケーションを取る時はサッカーの話しはほとんどせず、私生活やたわいのない会話で気を紛らわすことを心がけていますね」

-東京Vはアカデミー出身者や新卒、移籍加入選手が融合している

「チーム戦術はもちろん、選手の技術に情熱が乗っかっている。うまさだけでなく、走力や戦う部分はうちのスタンダード。諦めずに走ることは、見ている人をひきつける試合になるし、面白い。急な移籍がある世界でもあるので、自分の武器として全ポジションの情報は常にリストアップしています」

-大学生は即戦力、高校生は将来的な可能性を重視

「そういった傾向はリーグ全体にあると思いますが、うちはユースに質の高い選手がいるので、そこにいないタイプの選手を獲得することを、スタッフ陣やアカデミーコーチと意見交換しながら進めています」

-プロ志望選手にスカウト目線でエールを

「個人的には弱点の修復に時間をかけるより、自分の武器を磨くことがいいと思います。指導者から短所として指摘されたことをしっかりと受け止め、取り組みながらも、長所をどうチームに生かしていくかを考えることが、1つポイントになるかと思います」

-スカウト職を志す人も多い

「求人が出る職種ではないのでネットワークを広げ、多くの人とつながることが大切になってきます。自分も1度、サッカーと違う分野で働いた期間がありましたが、必要なスキルはやはり、コミュニケーション能力でしょうか。普段の生活からタイミングを計りつつ、遠慮せずに話しかけることを意識してみては」

-10、11年は反町康治氏(現J2清水GM)が指揮した湘南で通訳、分析などを担当。選手には寺川能人氏(現J1新潟強化部長)や野沢洋輔氏(現新潟営業本部長)がいた

「とても濃い時間を過ごせました(笑い)。寺さんとはJの試合会場で会った際に『何しき来たんや』と声をかけられる(笑い)。Jの舞台で当時と違う立場で戦えてうれしいですね」

-地元新潟への思いは

「今でも思い出す場所です。この春、新潟駅がリニューアルしていて迷子になりました(笑い)。帰省した際は坂町駅近くの『いこい食堂』によく行きます。是非、行ってみてほしいですね」

-スカウトという仕事のやりがい

「今はどのクラブも大学2、3年生のうちに選手を獲得するケースが多くて、こちらも競争ですが、獲得した選手が『東京Vを選んで良かった』と思ってくれるように頑張りたい。そして、連れてきた選手がリーグで活躍したり、将来、日の丸を背負って戦ってくれたらうれしいですね」

◆安竜鎮(あん・りょんぢん)1983年(昭58)4月13日生まれ、新潟市出身。新潟朝鮮初中級学校でサッカーを始める。朝鮮大学校と社会人チームFCコリアでは、両足を使いこなす超攻撃的サイドバックとして活躍。在日朝鮮サッカー協会を退職後、10、11年は湘南で通訳兼副マネジャー、分析担当を歴任。12~19年は東京で通訳、チーフマネジャーなどを務め、21、22年は盛岡で強化部長。23年から東京Vでスカウトを担当。

情報提供元: 日刊スポーツ
記事名:「 新潟市出身の安竜鎮氏「いつか日の丸を背負う選手を」好調・東京Vでスカウト担当