【ゼーフェルト(オーストリア)時事】ノルディックスキー複合男子で五輪3大会連続メダリストの渡部暁斗(34)=北野建設=が、苦悩のシーズンを送っている。個人、団体の銅メダル2個を獲得した昨冬の北京五輪後、モチベーションを高める目標が定まらずに葛藤。競技生活の区切りを意識して奮起につなげようと、「引退するタイミングを決めようと思う」とも発言した。 1月27~29日にオーストリア・ゼーフェルトで開催されたワールドカップ(W杯)3連戦で、W杯通算250試合出場の大台に到達した。いずれも前半飛躍で上位につけられず、23位が最高だった。今季は肋骨(ろっこつ)や背中に痛みが出て、年明けの試合を欠場。痛みは引いたものの、本調子には戻っていない。 5大会連続出場の北京五輪を終え、「正直、気持ちが切れていた。次の目標がなかった」と打ち明けた。昨年5月に2人目の子供が生まれ、育児にも奮闘。練習量は以前の半分ほどに減った。「今までの積み重ねがあるから何とかなるのでは、と甘く見ていた。自分の失敗」と受け止める。 闘志が湧かない自身へのいら立ちを抱えつつ、「トップ争いができなければ、競技を楽しめない部分があることに気付けた」と高みを目指す意欲は残っている。「五輪なのか世界選手権なのか、ちゃんと終わりを決めた上でやらないとモチベーションは戻ってこない」と覚悟を示す。正念場を迎えた日本のエースは、もうひと花咲かせられるか。 (了) 【時事通信社】 〔写真説明〕ノルディックスキー複合の今季ワールドカップで苦戦が続く渡部暁斗=29日、オーストリア・ゼーフェルト