楽日の相星決戦。勝敗を分けたのは意地と、経験の差だった。強く当たった貴景勝は不本意な左差しになったが、すかさず豪快にすくって琴勝峰を裏返しに。番付の権威を守った大関は「悔しい思いをたくさんしたので、今回の優勝で少し報われた」。勝ち気な26歳の目が少し潤んで見えた。 「大関は優勝するか、しないか」と常々公言する。それだけに前回優勝からの2年余りは苦しい日々だった。首などのけがに苦しみ、あと一歩のところで賜杯を逃した場所も少なくない。御嶽海、正代の陥落で大関は一人だけに。横綱照ノ富士の休場もあって背負うものが大きくなった中、「誰もが大関になれるわけではない。重圧を感謝に変えて取り組んできた」と振り返る。 妻は元大関北天佑(故人)の次女。体調管理に繊細な夫が求めれば15日間、同じ夕食を用意してくれたこともあったという。3度目の賜杯獲得。「義理の父の優勝回数を超えられてうれしい」との言葉には、家族への実直な思いもにじんでいた。 続いていた平幕優勝を3場所で終わらせ、来場所は準ご当所の大阪に乗り込む。最高位への思いを聞かれ、「もっと謙虚になって頑張っていきたい」と静かに闘志を燃やした。「満員御礼」の館内を包んだ大拍手に期待を感じ取ったはずだ。 (了) 【時事通信社】 〔写真説明〕優勝し、インタビューに答える貴景勝=22日、東京・両国国技館 〔写真説明〕優勝し、万歳で祝福される貴景勝(中央)=22日、東京・両国国技館(代表撮影) 〔写真説明〕優勝パレードに出発する貴景勝(右)=22日、東京・両国国技館(代表撮影)