年明けの箱根駅伝で駒大のエースとして2年ぶりの総合優勝に貢献した田沢廉が、4月から実業団のトヨタ自動車に進む。出雲駅伝、全日本大学駅伝を合わせた3冠を達成し、今春限りで勇退する大八木弘明監督の花道を飾った。引き続き駒大を拠点に同監督の指導を受け、再び世界を目指す。 昨年の夏合宿中、他の4年生と一緒に大八木監督から退任の意向を正式に伝えられた。涙を流しながら3冠への思いを語る姿に心を動かされ、「自分たちが応えるしかないと改めて思った」。 出雲と全日本を制したが、昨年12月上旬に新型コロナウイルスに感染し、練習が約1週間できなかった。思わしくない状態を踏まえて3区を希望したが、大八木監督は各校のエースが集う2区での起用にこだわった。 田沢も期待に応えるように、中大の吉居大和、青学大の近藤幸太郎と競り合い区間3位。監督は往路優勝の後、「2区が駄目だったら、外すしかなかった」と絶対の信頼を口にした。 大八木監督の熱血指導を受け、昨年の世界選手権で1万メートルに出場。「最高の指導者。人間性も行動力も、うちの監督は違う」。卒業後も師事を熱望し、恩師の引き際と重なった。 当面の目標は8月の世界選手権(ブダペスト)。春先の米国の競技会で、日本記録を上回る1万メートルの参加標準記録(27分10秒00)突破を狙う方針だ。田沢が将来のマラソン挑戦も見据えて「階段を一段一段上っていきたい」と言えば、大八木監督は「指導者としてラストチャレンジをしようと思う」。師弟の二人三脚が始まる。 (了) 【時事通信社】 〔写真説明〕箱根駅伝で往路優勝し、撮影に応じる駒大の大八木弘明監督(左)と田沢廉=2日、神奈川県箱根町