ポルトガルの初優勝の夢は、ロナルドの涙とともに散った。敗戦を告げる笛を聞くと、一人足早に引き揚げ控室へ。必死にこらえていたのだろう。人目につかない通路へ入ると顔をくしゃくしゃにして号泣した。あまりにも痛々しいエースの姿だった。 1点を追う後半6分に意気揚々とピッチへ。直後に中央でフリーになると、右クロスが上がる。だがボールは届かず、「よこせ」と言わんばかりのジェスチャーでもどかしさを示した。 最大の見せ場は後半終了間際に訪れた。相手DFの背後に抜け出し、右足を思い切り振り抜いた。しかし、低いシュートはGKの好守に阻まれた。結局、シュートはこの1本だけ。チームを救うことも、初の決勝トーナメントでのゴールもかなわなかった。 マンチェスター・ユナイテッド退団が発表されて間もない1次リーグ初戦のガーナ戦で、W杯史上初の5大会連続ゴールの偉業を達成。「記録はとても誇らしい」。笑顔のスタートを切ったが、一発勝負に入ったスイス戦からは控えに回り、逆風は続いた。 先発から外す決断を下したサントス監督は、母国メディアから批判を浴びた。「後悔はしていない。最も落ち込んでいる2人を挙げるとすれば、ロナルドと私になるだろう」と声を落とした。 37歳。年齢を考えればこれが最後のW杯になるだろう。5大会で計8ゴール。その歴史を彩ったスターは、無言のまま大会を去った。 (ドーハ時事) 【時事通信社】 〔写真説明〕モロッコに敗れ、引き揚げるポルトガルのロナルド(手前)=10日、ドーハ(AFP時事) 〔写真説明〕後半、競り合うポルトガルのロナルド(左)とモロッコのブファル=10日、ドーハ 〔写真説明〕後半、指示を出すポルトガルのロナルド(左)=10日、ドーハ(AFP時事)