日本のスポーツクライミング界に新星が現れた。松山大2年の大政涼(20)は今年、95度に前傾した高さ15メートルの壁を登る速さで争う種目の「スピード」で日本記録を3度も更新した。2024年夏のパリ五輪出場へ向け、自信を深めている。 3月のスピード・ジャパンカップで初優勝。6月のワールドカップ(W杯)で日本記録の5秒61をマークした。7月には地元愛媛で行われた競技会で5秒42まで縮め、「思っていた以上に記録が伸びている」と振り返る。 スタートからの加速を最大の持ち味とする。今季は東京にいるトレーナーの指導で体幹を中心に強化し、「その積み重ねが出てきたと思う」。下半身から上半身へ力が連動するようになり、大きな躍進につながった。 制限時間内に完登した課題の数を競う「ボルダリング」、登った高さを争う「リード」で日本は世界の強豪と互角に渡り合う。戦略や技術が求められる両種目を得意とする一方、力勝負のスピードは苦手としてきた。スピードのコース設定は世界共通で毎試合同じ。日本代表の安井博志ヘッドコーチは「(5秒42は)欧州強豪国のナショナルレコードに匹敵するタイム。五輪を狙える選手が出てきた」と期待する。 パリ五輪はスピードが単独種目になり、出場枠は14人と狭き門。「まだ遠い存在だが、意識はしている」。スピードはアジアのレベルが高く、世界記録はインドネシア選手が持つ5秒00。「早く追い付きたい。まだ伸びしろがあると思っている」。日本最速の称号だけでは満足していない。 (了) 【時事通信社】 〔写真説明〕スポーツクライミングの「スピード」で日本記録を持つ大政涼(WIN AGENT提供)