スイスは立ち上がり、自慢の堅守が揺らいでいた。カメルーンの鋭いカウンターを受け、再三ピンチを招いた。悪い流れを振り払ったのは、特別な思いを胸にピッチに立ったエンボロだ。 後半開始直後。左から右へ素早くパスをつないでサイドを変え、敵陣深くに攻め込んだ。シャキリからの絶妙な低いクロスをエンボロが落ち着いて押し込んだ。待望の先制点。ゴール前には歓喜の輪ができた。 エンボロにとってカメルーンは出生地であり、父親の母国。幼少期に移住したスイスを背負い、「第二の故郷」との初戦に臨んだ。屈強な肉体とスピードを併せ持ち、日本の南野も所属するモナコでプレー。今季フランス1部リーグで7得点を挙げて勢いに乗る25歳が、W杯初ゴールを刻んだ。 スイスは2006年から前回までの4大会のうち、3大会で1次リーグを突破。ヤキン監督は試合前日、「われわれは過去最高のスイスだと思う。歴史を刻みたい」と自信に満ちていた。目指すのは1954年大会以来となる8強入り。格下から勝ち点3を物にし、順調に滑り出した。 (アルワクラ時事) 【時事通信社】 〔写真説明〕後半、先制ゴールを決めるスイスのエンボロ(右端)=24日、アルワクラ(ロイター時事)