2―3で壮絶な逆転負けを喫した前回2018年ロシア大会のベルギー戦。4年前の決勝トーナメント1回戦で強豪を追い詰めた戦いぶりは世界から称賛されたが、吉田(シャルケ)の当時の気持ちは冷めていた。「グッドルーザー(潔い敗者)は、もういい」。試合後、日本のロッカールームが清掃されていたことも評価されたが、敗戦が美化される歯がゆさがあった。  苦い記憶が今のチームの原点。以来、勝利にこだわる姿勢を鮮明にした。日本協会の反町康治技術委員長は「脇役ではなく主役になりたい」と話したことがある。ベルギー戦は細かなミスが命取りになり、後半の2得点で一時2―0としながら、そこからひっくり返された。今回はW杯通算6勝目で日本史上初の逆転勝ち。2ゴールでリードを奪った後、ドイツの反撃をしのいだことに価値がある。  W杯で逃げ切れない日本の姿は過去、何度もあった。06年大会はオーストラリアに1―0の後半39分から立て続けに3失点。14年大会のコートジボワール戦も、先制しながら後半に2点を失った。共に大会初戦で逆転負けを喫し、挽回できずに1次リーグ敗退につながった。「これまでは押し込まれて追い付かれることや(試合を)落としてしまうことがあった」と森保監督。自身も現役時代のイラク戦でロスタイムに追い付かれ、W杯出場をあと一歩で逃す「ドーハの悲劇」を味わった。  欧州組が大半を占める日本代表に詰めの甘さはなかった。吉田は「試合前から落ち着いていて、必要以上に高ぶることもなかった」と振り返る。今回16強入りを果たせば、因縁のベルギーと再戦の可能性もある。優勝4度を誇るドイツを破ったチームには勢いがある。再び世界を驚かせる力はあるはずだ。 (ドーハ時事) 【時事通信社】 〔写真説明〕2018年W杯の決勝トーナメント1回戦・日本―ベルギー。日本は後半ロスタイムにベルギーのシャドリ(右から2人目)に決勝ゴールを決められる。左は日本代表のGK川島永嗣=2018年7月2日、ロシア・ロストフナドヌー 〔写真説明〕1次リーグ・ドイツ―日本。後半、勝ち越しのゴールを決める浅野拓磨(中央)=23日、カタール・ドーハ 〔写真説明〕アジア最終予選のイラク戦でW杯出場の夢が消え、がっくりと座り込む三浦知良(手前右)と、励ますオフト監督=1993年10月28日、ドーハ
情報提供元: 時事通信社
記事名:「 前回の敗戦糧に逆転勝ち=終盤の戦いに成長の跡―W杯サッカー・日本代表