賜杯がちらつけば、途端に体が硬くなる―。そんな人間臭さも魅力の高安が、今場所の勝負どころで少し違う姿を見せた。苦手とする若隆景を攻め切って3敗を堅持。トップの玉鷲とは1差に縮まった。 4日目から8連勝と波に乗る関脇との3敗対決。右でかち上げて相手の上体を起こすと、左右の喉輪で休まず押し続ける。土俵際に追い込んでからタイミング良く引き落とした。「後手にならないように。思い切り踏み込めたのでよかった」。前日は痛い黒星を喫したが、冷静さを取り戻し、優勝争いに踏みとどまった。 3月の春場所では初日から10連勝。しかし11日目で若隆景に敗れ、14日目、千秋楽と連敗。そして決定戦で若隆景に賜杯をさらわれた。そんな因縁の相手に雪辱し、「落ち着いて相撲を取れるように心掛けている。切羽詰まるよりは」。過去に何度も見せてきた悲壮感は消えている。 初優勝を視界に入れ、残り3日。「集中するだけ。多分、玉鷲関とも当たると思うので、精いっぱいやりたい」。今度こそ勝負弱さを克服し、悲願に向けて突き進む。 (了) 【時事通信社】 〔写真説明〕高安(左)は若隆景を引き落としで破る=22日、東京・両国国技館