今場所の玉鷲は動きが良い。立ち合いで照ノ富士を押し込むと、左右の喉輪で上体を起こす。差さった右ですくいながら前へ。そのかいなを返すようにしてがむしゃらに寄り切り、「一気に勝負を決められてよかった」と笑みを浮かべた。 何度経験しても金星の味は格別だ。照ノ富士からは今年4個目となるが、「本当にうれしい」と声が弾む。八角理事長(元横綱北勝海)は「横綱と当たるときには本当にいい相撲を取る。玉鷲を褒めるしかない」。挑戦者らしく無欲で立ち向かうからこそ、きっぷの良さも発揮できるのだろう。 37歳9カ月での金星獲得は、昭和以降の新入幕力士では4位の年長記録。「もっと上の先輩たちもいるので、まだまだ全然」。記録への過度な執着はないが、8日目には歴代3位の貴闘力に並ぶ通算連続出場1456回の節目も待っている。 初日からの5連勝は自身初めて。幕内上位ではただ一人の土つかずを守った。「体がよく動いている。変な相撲は取らずに、前に出て自分の相撲を見せたい」。今の攻撃相撲を貫けば、目標の2桁白星がぐっと近づく。 (了) 【時事通信社】 〔写真説明〕照ノ富士(左)を攻める玉鷲=15日、東京・両国国技館