競泳男子100メートル自由形に驚異の新鋭が現れた。今年の世界選手権を制したダビド・ポポビチ(17)=ルーマニア=が、46秒86の世界新をマーク。高速水着の開発争いが激しかった時代の記録を13年ぶりに塗り替えた。 従来の記録はセザール・シエロフィリョ(ブラジル)が2009年世界選手権の決勝で出した46秒91。「47秒の壁」を破って初めて公認された快記録だった。ポポビチは同じローマで開催された13日の欧州選手権決勝で更新。AFP通信によると、歴史を刻んだレースの後、「セザール・シエロがここで打ち立てた記録を破れたのは格別。自分が史上最速だと言えるのも爽快だ」と語った。 屈強な選手がそろう中で細身の体つきが目を引く。体が出来上がっていなくても快挙を遂げた要因を、ラドゥレスク・コーチは「水に対する感覚が鋭い」と指摘する。 ラドゥレスク氏は、10歳だったポポビチが同い年の選手と競った時の姿が忘れられない。25メートルを泳いで最下位が脱落していくレースを「ブービー」でしのぎながら、最後の25メートルで勝った。「彼の前を行く子たちは実力を証明したかったのだろうが疲れ果てていた」。勝ち切るだけの体力に加えて、賢さも備えていた。 水泳にのめり込む前はカードマジックなどをたしなんでいたという若きスイマーを、AFPは「痩せた水の魔術師」という異名を見出しに取って紹介した。19歳で迎える24年パリ五輪でも、世界を驚かせる泳ぎを見せてくれそうな予感がある。 (時事) 【時事通信社】 〔写真説明〕欧州選手権の競泳男子100メートル自由形決勝で46秒86の世界新記録をマークしたポポビチ=13日、ローマ(AFP時事)