ロシアによるウクライナ侵攻は収束が見通せず、サッカーのワールドカップ(W杯)カタール大会は緊迫した国際情勢の中で開幕を迎える可能性がある。紛争下での開催となれば異例。国際サッカー連盟(FIFA)の振る舞いにも注目が集まる。 FIFAは侵攻を始めたロシアに対し、いったんはロシア・サッカー連合名義で主催大会への出場を認めたが、批判が殺到したことで除外を決定。欧州予選プレーオフで対戦予定だったポーランドなどは試合拒否を表明していた。外交を重視してきたFIFAだが、対応のまずさが際立った。 2026年W杯から出場チーム数は48に増える。FIFAは収入増を狙い、近隣諸国との共催を条件にカタール大会から前倒しで拡大を図ったが頓挫。中東の緊張緩和に貢献し、さらに影響力を高めようという思惑は外れた。15年に発覚した汚職事件の余波もあり、近年は強いリーダーシップを発揮できていない。 戦争や紛争による感情が、ピッチに持ち込まれたことがある。1982年のフォークランド紛争で英国に屈したアルゼンチンは、4年後のW杯メキシコ大会の準々決勝でイングランドを撃破。「神の手」と呼ばれたゴールを決めたマラドーナは「復讐(ふくしゅう)」を公言した。カタール大会では戦禍に苦しむ人々に向け、どのようなメッセージが紡がれるのか。 4大会ぶりのW杯出場まであと1勝に迫ったウクライナの欧州予選での戦いぶりは世界中のファンの心を打った。「W杯が平和の一助、世界が一つになることに貢献できることを願う」とFIFAのインファンティノ会長。新型コロナウイルス下、スポーツの価値そのものが問われる昨今。W杯の存在意義を示す重責が、巨大組織にのしかかる。 (時事) 【時事通信社】 〔写真説明〕国際サッカー連盟(FIFA)のインファンティノ会長=6月13日、ドーハ(AFP時事) 〔写真説明〕W杯カタール大会の欧州予選プレーオフ決勝、ウェールズに敗れた後に声援に応えるウクライナの選手たち=6月5日、英国・カーディフ(EPA時事)