2025年に陸上の世界選手権が東京・国立競技場で行われることが決まった。東京開催は1991年以来。31年前に国内を沸かせた谷口浩美さん(62)と高野進さん(61)に、当時の記憶と3年後への期待を聞いた。 日本勢として世界陸上初の金メダルに輝いたのが、男子マラソンの谷口さん。大会最終日の9月1日、猛暑下のレースを制した。「その頃の諸外国選手は日本の暑さの経験がない。朝6時のスタート時に気温が26度あって、ゴールで31~32度。地の利もあった」と振り返る。それまでは、どちらかと言えば瀬古利彦さんや中山竹通さんに比べ目立たない存在。名声を高めた大会を「日本一になる前に世界一になっちゃった」と言い表した。 谷口さんは「世界選手権は本当に陸上の強い人の集まり。やりがいを持つことができる大会が来てくれる」と歓迎する。「前回は僕が日の丸を揚げた。今度も誰かが揚げてくれることを楽しみにしている」と語った。 91年東京大会前の日本選手権で出した男子400メートル日本記録(44秒78)が今も破られていない高野さん。東京大会では決勝進出(7位)の快挙を果たし、世界との差が大きかった短距離で鮮烈な印象を残した。「なかなか認知されていなかった種目だけど、結果を出すことで陸上の種目の幅広さを認めていただいた気がする」。満席の競技場を思い起こし、そう話す。 高野さんには、91年大会が日本陸上界の分岐点になったとの実感もある。「陸上の楽しみ方を知っていただいた。子どもたちが見て、そこを目指してという流れができ始め、日本の陸上が活気づいて現在があると思っている」。3年後に向け、「いろんな種目で世界に近づいている選手が出てきている。東京で行われることで、追い風になればいい」と願った。 (了) 【時事通信社】 〔写真説明〕1991年の世界選手権東京大会、男子マラソンで優勝した谷口浩美選手=同年9月1日、(旧)東京・国立競技場 〔写真説明〕1991年の世界選手権東京大会、男子400メートル決勝で力走する高野進選手(中央)=同年8月、(旧)東京・国立競技場