大相撲名古屋場所は10日、愛知・ドルフィンズアリーナで初日を迎える。新型コロナウイルス下で初めて観客数の上限を設けずに開催される本場所。禁止されていた出稽古も行われ、角界に通常の姿が徐々に戻ってきた。 ◇阿炎「部屋では体験できず」 名古屋場所まで1カ月を切った6月13日、東京都中央区の荒汐部屋は熱気に満ちていた。阿炎や霧馬山、北勝富士が出稽古。同部屋所属の関脇若隆景、幕内の若元春らを加えた6人の関取が申し合いをした。 新型コロナ感染拡大により、出稽古が行われたのは2020年3月の春場所前が最後。本場所に向けて鍛える機会が減っていた。再開を望む声は多く、日本相撲協会は感染状況を踏まえ、6月6日からの一時解禁を決定。荒汐部屋での稽古後、阿炎は「立ち合いの速さは部屋では体験できない。やっぱり出稽古は大事」。錣山部屋では唯一の関取。約2年ぶりの「日常」をかみしめたようだ。 その一方、照ノ富士は優勝した5月の夏場所の後、所属する伊勢ケ浜部屋での稽古に専念したという。相撲界としては出稽古の再開を歓迎するが、「稽古相手がいないというのは言い訳」と厳しい。稽古を自分との闘いとする横綱らしい言葉だ。 解禁後の出稽古は6月22日までの期限付きで、出向く力士が前日にPCR検査を受けるなどの条件も課された。今後も感染対策と鍛錬の場の確保に模索を続けることになりそう。ただ、照ノ富士が「人はそれぞれ違ったやり方で強くなる」と言うように、どうやって己を磨くのかは本人次第。いつの時代も変わらないのは、実力を示す唯一の舞台が本場所であるということだけだ。 (了) 【時事通信社】 〔写真説明〕出稽古に訪れた北勝富士と手合わせする若隆景(左)=6月13日、東京都中央区の荒汐部屋(代表撮影)