初めて味わう優勝争いの重圧にも、ベテラン佐田の海は「いつも通りの緊張感」と言ってのける。その言葉通り、動きの良い豊昇龍を持ち前の鋭さを生かして攻め抜いた。 すぐに右を差すと、左もうまくねじ込んでもろ差しに。一気に体を寄せ、強引な小手投げを打たれても、右足一本で踏ん張り、ともに土俵下へと転げ落ちた。物言いがついた際どい一番で、軍配通りに勝ち名乗りを受けた。 父の元小結佐田の海は速攻相撲で知られた。「一歩でも近づきたい。いずれ追い付ければ」との思いも胸に歩んできた力士人生。この日見せた差し身のうまさと速さは、憧れてきた父の勇姿をほうふつとさせた。 新入幕だった2014年夏場所以来、幕内で8年ぶりに2桁白星に到達した。ほとんど休まず土俵を務め、円熟の域に達した35歳。八角理事長(元横綱北勝海)の「真面目にこつこつやるのがいい。こういう頑張っている人が成績を残すとうれしい」という評価が佐田の海の実直さを物語る。 トップに並んで正念場を迎えても、「勝ち負けも大事だが、自分らしい相撲を取りたい」。賜杯への期待も高まりつつある中、ぶれずに臨む。 (了) 【時事通信社】 〔写真説明〕佐田の海(上)は豊昇龍を寄り倒し3敗を守る=20日、東京・両国国技館