プールから上がった池江は、少し明るさを取り戻していた。自身の最終種目だった女子100メートルバタフライ決勝。「勝っても負けても泣かないで帰るというのを目標にしていた」。1位になったものの、タイムは派遣標準記録に0秒10届かない57秒89。世界選手権出場を逃すという結果を受け入れた。 この日午前の予選は「力は入れずに泳いで」全体8番目で終え、午後の決勝に備えた。端の8レーンで闘ったのは、白血病を発症する前の自分。「ラストにバテる距離は短くなったが、それでもやっぱりバテてしまう」。前日まで出た2種目で個人種目の派遣標準記録を切れず、歯がゆさから涙がこぼれたが、「ここで切り替えてこそ、これから強くなっていける」と心に留め、最後まで泳ぎ切った。 400メートルメドレーなどのリレー種目では基準を満たしたものの、派遣要件をクリアする選手が足りなかった。「他にも試合はある。どんな大会でもいいので、しっかり経験を積んで競技力を上げていければ」と落ち着いた口調で話せるまで消化できた。あくまでも見据えるのは2024年パリ五輪。試行錯誤する時間は十分残されている。(了) 【時事通信社】 〔写真説明〕女子100メートルバタフライ決勝で1位となったが、派遣標準記録に届かなかった池江璃花子=5日、東京辰巳国際水泳場 〔写真説明〕女子100メートルバタフライ決勝で力泳する池江璃花子=5日、東京辰巳国際水泳場