フィギュアスケート女子の坂本花織(21)=シスメックス=は中野園子コーチ(69)に導かれ、2度目の五輪で銅メダルまでたどり着いた。例えるなら「厳しめのママ」。メダル獲得が決まった直後は「これでもかっていうくらいのハグをされました」。歓喜の瞬間を分かち合った。 坂本は地元神戸のリンクで、4歳から中野コーチの指導を受けてきた。コーチが自ら「スケートの町工場」と言うように、大所帯のクラブではない。ここで四大陸選手権覇者で1学年上の三原舞依らと高め合ってきた。 「技術面の学びは全部、中野先生から。教科書というか辞書」と全幅の信頼を置く。練習でミスをすると曲が止まり、檄(げき)が飛んでくる。褒められることはめったにないが、「中野先生といたら心は鍛えられる」と信じてついてきた。 中野コーチは坂本を「戦友」と呼ぶ。「この4年間は戦いだった。何でも必死になって怒れる。そういう戦いができたのがよかった」。妥協せず、6位の平昌五輪を上回る成果を目指してきた。 4回転ジャンプやトリプルアクセル(3回転半)がなくても完成度と表現力で勝負し、自己ベストを更新した。ドーピング騒動に揺れた優勝候補のカミラ・ワリエワ(ロシア・オリンピック委員会)がフリーで大崩れしたことも、3位に割り込めた一因だった。 「あの子は運を持ってきている」。銅メダルが決まると中野コーチは言った。その運を引き寄せたのは「努力。一番努力をしている」とも。誰よりもその姿を見てきたからこそ、そう言える。最大級の賛辞だった。(時事) 【時事通信社】 〔写真説明〕フィギュアスケート女子で銅メダルを獲得した坂本花織(左)と中野園子コーチ=17日、北京 〔写真説明〕フィギュアスケート女子フリーに臨む坂本花織(左)と中野園子コーチ=17日、北京