北京五輪のフィギュアスケート女子で、坂本花織(シスメックス)が銅メダルを獲得した。17日のフリーで、3位だったショートプログラム(SP)に続く自己ベストをマークして合計233.13点。4回転ジャンプやトリプルアクセル(3回転半)がなくても勝負できたのは、坂本ならではのスタイルを確立した成果だった。 SP4位だったロシア・オリンピック委員会(ROC)のアレクサンドラ・トルソワが、直前で4回転を4種類5本跳んだ。高得点にどよめく会場をよそに、坂本は落ち着いていた。「とにかくノーミスでやる」。心構えは変わらなかった。 3回転ルッツに踏み切りの警告が付いたものの、流れるようにジャンプを次々と決めた。表現力や芸術性を評価する演技構成点は全5項目で9点台をそろえ、演技力に10点満点を付けたジャッジも。滑り終えると、表情を崩さずに両拳を突き上げた。ドーピング騒動に揺れる優勝候補のカミラ・ワリエワ(ROC)が最終滑走で大崩れし、坂本のメダルが決まった。 大技がなくても、スピード感あふれる構成をミスなく滑り切るには高い技術と体力が求められる。坂本は逃げずに向き合い、突き詰めてきた。6位だった平昌五輪から4年の日々が報われ、「落ち込んだ時期もあったが、ここまで上がってこられて自信になった。諦めずに頑張ってきてよかった」と晴れやかだった。 2006年トリノ五輪で荒川静香さんが金メダルに輝いた際の新聞記事は、まだ家に飾ってあるという。女子日本勢で個人の五輪メダリストは荒川さん、銀の伊藤みどりさんと浅田真央さんに続く4人目。「実感が湧かない。一緒の立場にいて大丈夫かな」。坂本らしい笑顔ではにかんだ。(時事) 【時事通信社】 〔写真説明〕記者会見で笑顔を見せるフィギュアスケート女子の坂本花織=18日、北京