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冨田: 初めに、現在までの変遷について教えてください。
キーコーヒー株式会社 代表取締役社長・柴田裕氏(以下、社名・氏名略): 当社は1920年(大正9年)に横浜で創業し、今年で104年目になります。振り返ると、創業からの100年間は「コーヒーを誰でも簡単に楽しめるものにする」というテーマを追求した日々でした。1921年には希釈飲料のコーヒーシロップを発売したり、1955年からはコーヒー教室を開催し、喫茶店を開業したい方や、ご自宅でおいしいコーヒーを楽しみたい方へ向けて、コーヒーの知識や抽出技術を広めてきました。
創業100年を超えてからは、コーヒーの魅力をより多くの方に広める活動を心がけています。商品デザインやパッケージの工夫はもちろん、コーヒー生産地へ貢献する活動や、コーヒーの生産者が持つ思いにストーリーを持たせた情報を発信することにも力を入れています。今後も一人でも多くの方にコーヒーを楽しみ、興味を持っていただけるような取り組みを推進していきます。
冨田: 御社のこれまでの100年以上の歩みの中で柴田社長のご家系の中で代々受け継がれてきたものもあるかと思いますが、柴田社長が経営判断する中で最も重視しているものを教えてください。
柴田: 経営判断の中で「持続可能性」を大切にしています。もちろん、環境面での持続可能性は大前提ですが、加えて「喫茶店文化」を継承していくことも大切にしていきたいと考えています。生活者の皆さんがコーヒーを飲む空間で幸せを感じ、何か新しいものを考えていただくような空間を守っていくことで、喫茶店という場所を通じて日本国内の文化や地域振興にも貢献していきたいと考えています。
冨田: 柴田社長の経営者としてこれまでのご経験から、ご自身ではどのような強みを持っていらっしゃると思われますか?
柴田: 強みであるかは分かりませんが、1994年にキーコーヒーが上場する際に上場プロジェクトのチームに所属していたことや、MBA(経営管理修士号)を取得した経験から「会社全体を総合プロデュースする能力」は重要だと考えています。
当時はコーヒーをおいしく作って販売するだけで十分だと思っていたのですが、それだけでは不十分であるということに気付かされました。経営者として、イベントや取材、そして販売しているコーヒー自体を通じて、会社の魅力を積極的に発信していくことがとても重要であり、大切にしている部分です。
冨田: ここまでは過去についてお伺いさせていただきましたが、これからは未来に目を向けてお話を伺いたいと思います。今後、御社が発展していく上で関連してくるテーマや未来構想について教えてください。
柴田: 関わってくるテーマは様々ありますが、特に強く発信したいのが「コーヒーの2050年問題」です。2050年までに気候変動や温暖化によって、アラビカ種のコーヒーを栽培できる地域が半減してしまうと言われています。このような問題についても、しっかりと生活者の皆さんに情報を伝えていくことが重要だと考えています。
また、2030年までのテーマとして「珈琲とKISSAのサステナブルカンパニー」を掲げています。業界をリードする企業として、環境や社会に配慮しながら、コーヒー以外の飲み物や喫茶文化も含めた事業展開を目指しています。
冨田: 具体的にはどのような取り組みでしょうか?
柴田: リプトンの紅茶や、堀田勝太郎商店の緑茶などを展開することで、コーヒー以外の紅茶や緑茶のラインアップを充実させています。さらに、日本の喫茶店文化を海外に発信する取り組みとして、昨年にはインドネシアのジャカルタやフィリピンのマニラにコーヒーショップを出店し、日本ならではのハンドドリップコーヒーの他に、卵サンドやクリームソーダなど日本の喫茶店で親しまれているメニューを提供し、現地の方に喜んでいただいています。
冨田: 最後に、ZUU onlineユーザーに一言お願いします。
柴田: 当社は約53,000人という多くの個人株主の方々に支えていただいております。今後も、コーヒーが好きな方に当社のファン、そして株主になっていただけたらありがたいと思っています。引き続きどうぞよろしくお願いします。
冨田: 本日は貴重なお話をありがとうございました。