政府からの「リスキリング支援1兆円投資」や「人的資本開示の義務化」の発表があり、企業というものの“人財”や“社員”への向き合い方が問われている。そんな中、“働くもの”に愛され、社員の力で成長し続ける企業に、その取り組みや今後の展望を伺った。

(画像=株式会社ジャパネットホールディングス)
永溪 幸子(ながたに さちこ)
株式会社ジャパネットホールディングス 取締役
1981年佐賀県生まれ。佐賀大学卒業後、ジャパネットたかたへ入社。
入社後はコールセンター、媒体営業、新規事業戦略などを担当する。
ペーパーメディア企画制作部門の責任者を経て、2017年にジャパネットたかたの執行役員に就任。
2020年にジャパネットホールディングス執行役員に就任し、総務・人事・コンプライアンス・ファシリティ部門を担当。以降は約200人規模の東京から福岡へのオフィス移転、働き方改革、給与改定などの指揮を執る。
2024年1月にジャパネットホールディングス取締役に就任。
ジャパネットグループは、通信販売事業とスポーツ・地域創生事業を2つの柱として事業を展開している。
通信販売事業では家電製品をはじめ、クルーズ旅行やウォーターサーバー、おせちをはじめとしたグルメなどを取り扱っており、テレビ・紙媒体・WEB・ラジオなどで販売。
スポーツ・地域創生事業では、プロサッカークラブの「V・ファーレン長崎」とプロバスケットボールクラブ「長崎ヴェルカ」をグループ会社にもち、民間主導のプロジェクトとして、サッカースタジアムを中心としたまちづくり「長崎スタジアムシティ」の建設を2024年10月14日の開業に向けて進めている。

これまでの事業変遷

当社は1986年に長崎県佐世保のカメラ店からスタートしました。そこから4年後、地元のラジオ局でラジオショッピングを行い、5分で50台のカメラが売れるという通販の可能性に出会い、その後、通販事業を開始しました。最初はラジオのみを販売チャネルとしていましたが、徐々にテレビショッピングへと広がり、そのおかげで顧客基盤が出来上がりました。 そして、カタログやチラシの発行、インターネットの普及に伴い、ウェブサイトを立ち上げることで、会社の発展や時代背景に合わせて通販のチャネルを拡大してきました。商品に関しても、テレビや掃除機などの家電商品だけでなく、最近ではスマートフォンやウォーターサーバー、クルージング、グルメ定期便など、サービスを伴う商品にも拡大しています。 また当社のポリシーとして、「見つける、磨く、伝える」という3ステップを大切にしています。世の中にある本当に良いものを見つけ、ジャパネットが入ることでより良い商品やサービスに磨きをかけ、伝えていくことを重視しています。このポリシーに合致するものであれば、商品や業界問わず当社はチャレンジしようと考えています。

(画像=株式会社ジャパネットホールディングス)

その一環として2017年からはスポーツ・地域創生事業に参入しました。きっかけは地元長崎県のプロサッカーチームであるV・ファーレン長崎が存続の危機に陥ってしまったことです。もともとはスポンサーの立場でしたがスポーツの楽しみが長崎県から消えるのを防ぐため、完全子会社化をしました。 その後、長崎初のプロバスケットボールクラブである長崎ヴェルカを創設し、スポーツを通して長崎を盛り上げていく取り組みを行っています。 さらに、開発を進めているサッカースタジアム・アリーナ・商業施設などの複合施設『長崎スタジアムシティ』(2024年10月開業予定)は、総事業費は約900億、13,000人の雇用創出を見込んでおり、長崎の人口流出問題の解決にも繋がることを期待しています。 また、2022年からは放送局事業にも進出し、BSJapanextというテレビ局を展開しています。これからも、当社のポリシーにつながるものであれば、新しい事業にも挑戦していきたいと考えています。

(画像=株式会社ジャパネットホールディングス)

組織における転換期とその後の反響

事業を拡大していくなか、当社においてその後の方針が大きく変化する転機がありました。それは、2015年に創業者である高田明から二代目の高田旭人に社長が交代したことです。創業者時代はカリスマ性を持ったトップダウン型の経営が行われていましたが、二代目の高田旭人はトップダウンではなく、ボトムアップやミドルマネジメントを重視する方針を明確にしました。 当社では毎年会社テーマ打ち出すのですが、2015年は「集合天才」という言葉で、一人ひとりの力を結集して結果を出すことを目指すと掲げました。この会社テーマを実現するには、組織としてのチーム経営や、会社として個々の意思の尊重をすることで、従業員の積極的な行動が求められるようになりました。

こうした背景もあり、働き方改革を積極的に推進しています。具体的には、従業員に働きやすい環境を提供するだけでなく、生産性を高めるための施策も実施しています。例えば、社長交代前は無制限だった残業時間をルールを決めて制限したり、生産性を高めるためキャビネットなしのデスクへ入れ替えや資料印刷をしなくていいようにノートパソコンの導入、会社ルールの策定など、物理的な無駄を削減する取り組みを行いました。 これらの取り組みにより、初めは残業を制限することへの不安があった従業員からも働きやすさやワークライフバランスの充実が感じられるとの声が実際に寄せられました。

今の時代に必要な従業員との向き合い方

当社は働きやすさと生産性のバランスを重視しています。働きやすさの観点において、会社としては、長く勤めてほしいと考えているため、従業員が働きやすい環境への投資を積極的に行っています。 例えば、給与改定を行い、2023年4月から2年で年収を10%アップする目標を掲げています。このように、従業員に先行投資をすることで、従業員のパフォーマンスを高め、成果を生んでくれることを期待しています。

生産性に関しては、限られた時間の中で、どのようにすれば業務の質は落とさずに仕事を終わらせるかを考えてやり方を工夫することで、生産性が向上すると考えています。 そのためには、徹底的に残業のルールを決めて、働き方改革を実現することが必要です。例えば、物理的に残業ができない環境を作るため、定時になると自動でパソコンがシャットダウンされたり、パソコンの起動とシャットダウンで打刻を自動で記録するような仕組みがあります。 このように会社として従業員が働きやすくなるような支援をしつつ、物理的に生産性を上げるような仕組みをつくることで働きやすさと生産性のバランスを取っています。

(画像=株式会社ジャパネットホールディングス)

人的資本向上に向けて取り組んでいることやこれから取り組もうと思っていること

現在実施している人材育成プログラムに関してお話しします。当社は学びたいと意志のある社員を応援したいという想いがあります。今の人材育成プログラムとしては、全従業員が受けられる選択式研修や、若手の年次研修、部長レイヤー・経営層を育成するプログラムなどさまざまな取り組みを行っていますが、まだ改善の余地があると考えています。

具体的な方針は未定ですが、デジタル人材の育成に力を入れたいと思っています。また、採用において外部からの人材確保が難しい状況を実感しているため、社内で学べる環境を整え、今いる従業員の育成やパフォーマンス向上を図りたいと考えています。

また、社内コミュニケーションは非常に大切にしており、その中でも特にチーム力を重視しています。コロナ禍で一時的にリモートワークを導入しましたが、緊急事態宣言解除に伴い、比較的早めに完全出社に戻しました。

この方針は、直接コミュニケーションを取ることで、チーム間で生まれる価値があると考えているからです。また、社員旅行や大望年会、社内イベントなどを通じて、部署を超えて自然とコミュニケーションが取れる機会を多く設けています。

今後の展望と従業員への期待について

現在の日本企業は、法令遵守の意識や待遇への満足度は上がっていますが、成長率は横ばいの状況です。当社は、一人一人が目指すべき姿へ成長していくサポートとなるよう働き方を重視する部分と合わせて、学びの意欲がある人、成長したいという意欲がある人に環境を提供したいと考えています。 結果として、それがチームの力として成果に繋がっていくと信じています。

そのうえで時代によって変わる状況に対応するため、育成制度を強化し、従業員には変化対応できるようなスキルを身につけてほしいと考えています。

【ジャパネットの採用情報はこちら】 https://corporate.japanet.co.jp/recruit/

氏名
永溪 幸子(ながたに さちこ)
会社名
株式会社ジャパネットホールディングス
役職
取締役
情報提供元: NET MONEY
記事名:「 ジャパネットホールディングス:地域カメラ店から総合通販・地域創生への変革