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ーー創業から上場されるまでの事業変遷や、御社が展開されているビジネスモデルについて詳細をお聞かせいただけますか?
髙村代表(以下、敬称略):当社は2006年に設立され、ブログをマネタイズする事業からスタートしました。もともと私が当社の親会社であるサイバーエージェントの役員として広告事業部門を担当していたことから、子会社として当社の立ち上げに携わり、2010年に代表に就任しました。そこからは、スマートフォンの普及と共にツイッターやフェイスブック、インスタグラムなどのインフルエンサーマーケットが大きく伸びると同時に我々の事業も加速しました。2013年からはMBO(マネジメントバイアウト;経営陣による会社買収)を進め、2018年には完全にサイバーエージェントから独立し、2019年にはマザーズに上場しました。
ーー事業を展開されている中で、一番の主軸はSMM(ソーシャルメディアマーケティング)事業だと思いますが、他社との差別化が難しいところかと思います。御社の優位性についてお聞かせいただけますか?
髙村:大きく3点あると考えています。1点目は、先行者のメリットです。我々は、インフルエンサー系の事業を初期から展開しており、そのノウハウは他社よりもあると考えています。また2点目として、長く取引していただいている顧客に安心感を抱いていただいている点も強みの1つです。さらに3点目は、ソーシャルメディア広告におけるクリエイティブや企画、SNSアカウント運用など、マーケティング全般を一気通貫で対応できる点も強みです。自社で多くのプロダクトやサービスを持っていることで、顧客ニーズに合わせて迅速に対応できる点も大きな強みだと考えています。
ーーなるほど。インフルエンサーという領域が急拡大している中で、インフルエンサーの獲得や囲い込みが重要だと思いますが、御社の場合はどのような仕組みをとっていますか?
髙村:人気ブランドを取り扱っているような広告主を多く持っていることが、インフルエンサーが我々と仕事したくなるポイントだと思うので、広告主の拡充に注力をしています。また同時に、インフルエンサーの獲得に関しては、フォロワーの量だけではなく、質も重要視されるようになってきているため、企業のターゲットに合ったフォロワーを持つインフルエンサーをプランニングできるかが大事なポイントです。
ーーなるほど、ありがとうございます。
ーー令和に入ってからコロナ禍や経済市場を見ても激動の時代でしたが、その中でIPOという選択肢を取られた思いや背景についてお聞かせいただけますか?
髙村:主に新たな投資のための資金調達が大きな理由です。当社が100%子会社の状態であった2013年頃に、私が35%ほどの株式を買い取りました。当時はサイバーエージェントがインフルエンサー事業を今後そこまで注力しないという方針下にありましたが、スマホの普及や個人のメディア化が進むタイミングであったため、逆に大きなチャンスがあると感じていました。
ただ、子会社では資金調達ができないため、IPOを目指して市場から調達し、新たな投資に回すことがインターネット業界で新しい価値を創造する方法だと考え、上場に踏み切りました。
ーーありがとうございます。
ーー今まで過去と現在が主軸のお話でしたが、今後の御社の事業戦略や未来の構想について、髙村社長ご自身が思い描いている絵図などご教示いただきたいと思います。
髙村:現在、SMM事業に集中しており、それに伴いSNSの広告市場もかなり大きくなってきました。今まで広告だけが収益として確立されていましたが、インターネットの世界でいかにプロダクトを作り続けていけるかという点が、これからの課題だと考えています。そのために、新しい部門「Next Core Unit(新規事業創出の専門組織)(※以後NCU)」を作り、人材事業やクリエイターマッチングのプラットフォームなど、いくつか新しい事業の立ち上げを進めています。このようなSNS周辺領域から様々な新しい事業を拡大していくことで「サイバー・バズの経済圏」を創り上げていくことが理想です。
ーー直近の方針では、消費者向けのプラットフォームと広告主向けのプラットフォームがありますが、これらに付随した事業をどんどん展開していくのでしょうか?
髙村:はい、今はクリエイターと広告主をつなげるプラットフォーム「DETEKURU」や、人材事業を展開する「BuzzJob」、タレントの1on1のオンライントークシステムを展開している会社「WithLIVE」と協力しています。また、エージェント事業「Be One Agent」もローンチし、さらに、先日インフルエンサー向けの新しいプラットフォーム「pickka(ピッカ)」もローンチしました。
ーー様々な事業構想があるのですね。これまでの成長過程で大きな壁があったと思いますが、それらをどのように乗り越えたのでしょうか?
髙村:最初はブログのブロガーを扱っていましたが、この事業だけで経営していくことは非常に厳しかったです。当時は赤字が続いていましたが、その時にインスタグラム含め、インフルエンサー事業が出てきたことで、他の事業展開ができるようになりました。それが、1つの壁をクリアしたという意味では非常に大きかったと思っています。
それに加えて、組織上では人材部分で課題がありました。上場後、社員が増えていき100人を超えたタイミングでマネジメント不足が顕著になりました。若い社員も多く、人材の定着が難しかった時期がありました。
そこで、人材の育成や抜擢などのミドルマネジメントの育成に力を入れてきました。その結果、今は会社が成長の路線に乗れていると感じています。
ーー現在の御社の組織規模はどのようなフェーズにありますか?
髙村:
この1年は会社のフェーズが変わり、200人を超えるようになったので、ビジョンやバリューなどを社員みんなと一緒に考え、現在の会社のフェーズにあったものに直そうという取り組みを行っています。
ーー今後、御社としてどのような投資計画を描いていますか。また、金融市場や業界において重要だと思われるテーマについて、お聞かせいただければと思います。
髙村:基本的には、新規事業創出部門であるNCUに対して、会社の収益の一定割合を投資することを考えています。M&Aに関しても、機会があれば積極的に行っていきたいと思っています。また、デッドも含めて、資金調達や株式交換などにも積極的に動いていきたいと考えています。
ーー本業の部分と新規事業、買収された企業など、アップセルやクロスセルにつながってくる部分があると思いますが、遷移率などはどのような状況でしょうか?
髙村:新規事業に関しては、本業からのクロスセルが基本的には多いです。例えばHR事業だとクリエイターやデジタルの人材を紹介しているので、当社の持っているリソースに対するクロスセルがうまく機能しています。他の新規事業に関しても、SNSやSMMの周辺領域のものを立ち上げ、クロスセルしていくような形を考えています。今後、新しいツールの構築を考えているので、アップセルというよりはクロスセルになる方が多いと思います。
ーー新規事業やエージェント事業などが進んでいくと、ますます領域が広がり、他社と事業が被る部分が多くなると思います。そこで強みを発揮していく点に関してお考えをお聞かせいただけますか?
髙村:確かに、我々はインフルエンサーも抱えており、新しい領域も開拓しているため、競合は多くいますが、競合が多い分野では他社と協業して一緒に進めるスタンスを取っています。理由としては、後発で参入するのはコストがかかり、差別化が難しいためです。そこで協業し新たな価値を生み出し、他者と違うプロダクトを作っていくことを意識しながら、サービス開発を行っています。また、3年、5年というスパンが勝負だと思っています。10年先はわからないので、3年から5年の間をターゲットとして、新規事業に関しても積極的に挑戦をしています。
ーー最後の質問ですが、弊社のユーザー層は投資のアンテナが高い方々が多いです。IRの観点や、御社の成長性についてお聞かせいただけますでしょうか?
髙村:現在、SNSの広告市場自体は1兆円を超えており、今後5年ぐらいで2兆円近いマーケットに伸びていくと予想されています。また、インターネットユーザーも非常にスマホを使っており、SNSへの滞在時間やSNSを使っているユーザー数も増えてきています。
特に今の10代はデジタルに強いユーザーが増えてくるので、ますますSNSマーケティングやSNS領域といったもの自体は非常にビジネスチャンスがたくさんあると考えています。我々としては引き続きそこに力を入れていきたいと考えています。
また、我々しか作れないような自社のプロダクトや事業サービスもしっかりと作っていきながら、収益性の高い事業構造を構築していきたいと考えています。これは伸ばしていける分野だと確信しています。
ーーありがとうございます。非常に熱いメッセージをお聞かせいただきました。