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今回のFOMCで政策金利が変更されなかったのは市場予想通りですが、FOMC参加者の見通し(中央値)において、2024年内の利下げについての見通しが、前回(3月)見通しの3回から、1回へと大きく下方修正されたことはサプライズでした(1回の利下げ幅を25bp⦅べーシスポイント⦆として計算。なお、市場における事前予想は2回でした)(図表2をご参照ください)。
FOMCの声明文・見通しの公表段階では、金融市場は、FRBがタカ派化したとの印象を受けたように思われます。その受けとめを和らげたのがパウエルFRB議長の記者会見でのハト派的な発言でした。パウエル議長は、5月分のCPI統計が良い内容であったと明確に評価したうえで、「FOMC参加者の誰一人として、1回あるいは2回という年内の利下げ回数にコミットしているわけではなく、今後のデータ次第で回数は変わる」、という見方を示しました。また、パウエル議長は、2025年中の利下げ回数についての見通しが前回の3回から4回へと上方修正された点に言及するとともに、直近の5月分の雇用統計が雇用者増加数などの点で上振れる中でも、労働市場は緩やかに落ち着きをみせつつある、という見方を披露しました。
金融先物市場では、年内の利下げ回数についての織り込みが、前日(6月11日)の1.73回から6月12日には1.95回へとむしろ増加し、金融市場が5月分の米CPI統計の結果を前向きに評価していることが明らかとなりました。米10年国債金利も前日の4.40%から4.32%へと低下し、これが株式市場におけるグロース株に前向きの動きをもたらしています。
月次統計の中で最重要と言って差し支えない米CPI統計がインフレの低下を示したことで、今後数週間は、米国の株式・債券市場での前向きの動きが生じやすくなり、これがグローバル金融市場にもポジティブな形で波及する可能性が高まったと考えられます。
他方、日本銀行は、6月13~14日の金融政策決定会合において国債買入れ額の減額を議論する見通しです。今回の会合で国債買い入れ額の減額について議論するのは、足元での円安の動きに対する警戒感を背景にしていると考えられますが、FOMCと米CPI統計の結果を受けてドル円相場がやや円高に振れている点は、日銀が決定しようとしている減額策をやや慎重にさせる可能性があると思われます。
木下 智夫
グローバル・マーケット・ ストラテジスト
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