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プライム市場:2.27%
スタンダード市場:2.49%
グロース市場:0.64%
(※2024年10月末時点のデータ)
(参考:日本取引所グループ「その他統計資料」)
利回りが高い傾向にあるスタンダード市場でも、2024年10月末時点の平均値は2.49%です。つまり、国内の上場株式だけでは年利5%に到達しない可能性があります。
銘柄を厳選したり別の金融商品を購入したりする方法はありますが、過去の年利だけで投資先を選ぶと、損失のリスクが上がることもあるので注意してください。
一口に「年利」といっても、年利回り(利回り)を指す場合と年利率(利率)を指す場合では意味が変わります。
利回りとは、投資金額に対する利子も含めた年単位の収益の割合です。一方で利率とは、額面金額に対して毎年受けとる利子の割合を指します。
具体例で考えてみましょう。利率5%の債券を100万円分(額面金額100万円)購入したとします。「利率は?」と聞かれた場合は、「5%」が正解です。
その債券の価格が値上がりし、3年後に103万円で売却できたとします。3年間の利子は15万円(=額面金額100万円×利率5%×3年)で、値上がり益は3万円です。3年間で合計18万円の利益を得たので、「利回りは?」聞かれた場合は「6%」が正解です(実際の利回りの計算では、税金などの費用も考慮します)。
上記の例で、利回りを計算する際は、値上がり益と利子を合計して計算することを説明しました。資産運用の世界では、資産を売却することで得られる利益をキャピタルゲインと呼び、利子や配当、不動産の賃料収入のように、資産を保有している間に得られる利益をインカムゲインと呼びます。
キャピタルゲインとインカムゲインを合計してはじめて、資産運用のトータルリターンがでます。上記の例で言うと、キャピタルゲインが3万円で、インカムゲインが15万円にあたります。場合によっては、「インカムゲインで定期的に収入を得ていたが、資産を売却したら、積み上げてきたインカムゲイン以上のキャピタルロス(売却損失)がでて、トータルリターンではマイナスになってしまった」となることもあるので注意が必要です。
実際に、年利5%で運用することは可能なのでしょうか。前述のとおり、その「年利」が「年利率」を指しているのか、「年利回り」を指しているのかで答えが変わります。
前者の場合は、利率5%の債券を見つけることで達成できるでしょう。ただし低金利の昨今、利率5%の債券は滅多にありません。あったとしても、デリバティブ取引が仕組まれていたり、返済順位が大きく劣後していたり、発行体の信用力が低かったりと、何かしらのリスクが潜んでいると考えたほうがよいでしょう。
表面利回り5%の収益不動産や、配当利回り5%の株式(ETFやREIT含む)を購入することで、年利率5%の運用に近い状態をつくることはできます。ただし、不動産には空室リスクがあり、空室の間は賃料が入ってきません。株式には、配当が減ってしまう減配リスクや、配当がゼロになってしまう無配リスクがあります。したがって、どちらも年利率5%のインカムゲインが保証されているわけではありません。
債券は満期まで保有すれば原則として元本割れ(キャピタルロス)は発生しませんが、不動産や株式は売却時に、購入時よりも値上がりしている保証はありません。売却損が発生する可能性があります。トータルリターンがマイナスでは本末転倒なので、資産運用は「年利回り」で考えることをおすすめします。
ここからは、機関投資家の実際のポートフォリオと運用結果を見ていきましょう。今回ご紹介するのは、日本国民の年金を運用している年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)です。運用総額は177兆7,030億円(2020年度第3四半期末現在)で、「世界最大級の機関投資家」と呼ばれています。
運用結果が公開されている2001年度から2019年度までの利回りを見てみましょう。
2001年度 −1.80%
2002年度 −5.36%
2003年度 8.40%
2004年度 3.39%
2005年度 9.88%
2006年度 3.70%
2007年度 −4.59%
2008年度 −7.57%
2009年度 7.91%
2010年度 −0.25%
2011年度 2.32%
2012年度 10.23%
2013年度 8.64%
2014年度 12.27%
2015年度 -3.81%
2016年度 5.86%
2017年度 6.90%
2018年度 1.52%
2019年度 -5.20%
通期収益率 2.58%
収益率が10%を超える年もありますが、通期収益率は2.58%と、5%に遠く及ばない結果でした。直近5年間(2015〜2019年度)の基本ポートフォリオは、以下のようになっています。
国内債券35%(±10%)
外国債券15%(±4%)
国内株式25%(±9%)
外国株式25%(±8%)
なお、2020年4月1日からは新しい基本ポートフォリオとなっており、現在は上記の割合ではありません。
2020年度通算の運用成績はまだ発表されていませんが、第3四半期の期間収益率は+6.29%、2020年度4~12月の収益率は18.49%で、株高を背景に収益率が改善していることがわかります。
米国長期金利に上昇傾向が見られる現在、これ以上の債券価格上昇を見込むことは難しく、年利回り5%を達成するためには、多少のリスクを背負っても株式を一定の比率で組み込む必要があるでしょう。
利回りを上げるためには、「でていくお金を少なくする」ことも重要です。具体的には売買コストを下げたり、税金を圧縮したりすることで利回りは上昇します。
まったく同じ金融商品でも、金融機関によって手数料が変わることがあるので、できるだけ低コストの金融機関を選びたいものです。また、iDeCoやつみたてNISAなど税制優遇がある制度も有効に活用しましょう。
現実的に考えると、年利5%を達成するにはどのような方法があるでしょうか。ここからは、資産運用で年利5%を達成する考え方やポイントを解説します。
保有資産がすでに大きく値上がりしている場合は、一度売却する方法が選択肢になります。その資金で別の金融商品を購入すると、値上がりによって投資全体の利回りを増やせるかもしれません。
ただし、新たに購入した金融商品が下落する可能性もあるため、再投資の判断は慎重に行う必要があります。各銘柄の情報や経済ニュースなどを確認した上で、将来の値動きを入念に分析しましょう。
配当利回りや分配金利回りが高い銘柄は、安定したリターンを期待できる可能性があります。たとえば、米国株式には数十年にわたって連続増配している銘柄があり、そのなかには株価の上昇まで見込める銘柄もあるでしょう。
しかし、運用成果には将来の値動きも関わるため、配当利回りや分配金利回りだけでの判断は望ましくありません。値動きにも期待しつつ、配当などで安定したリターンを得るには、入念な情報収集や分析が必要になります。
現在のポートフォリオで年利5%が難しい場合は、価格の振れ幅が大きい金融商品も検討しましょう。損失のリスクは拡大しますが、振れ幅のある金融商品では大きなリターンを期待できる可能性があります。
例としては、為替動向の影響も受ける新興国株式などが挙げられます。また、新興国株式や暗号資産などに投資するファンド(投資信託)もひとつの選択肢になるでしょう。リターンとリスクのバランスをとりながら運用するには、様々な金融商品の組み合わせを考えることが重要です。
年利5%は可能なのか、どのような資産を持てば5%に届く確率が高まるのか、実際の機関投資家の運用例をご紹介しながら解説しました。
年利5%は不可能ではありませんが、リターンの裏側にはリスクがあります。「高い年利を狙うことは相応のリスクを負うこと」と理解した上で、資産運用を進めていきましょう。
※本記事は投資に関わる基礎知識を解説することを目的としており、投資を推奨するものではありません。
※税務の詳細はお近くの税理士や公認会計士にご相談ください。
The post 資産運用で年利5%は可能?利回りや利率を高める方法を解説 first appeared on Wealth Road.