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今回は、後半として「投資へのインプリケーション」、「下方/上方シナリオ」、「スウィング・ファクター」についてご説明します。
市場は既に、比較的楽観的なマクロシナリオを織り込んでいるようです。マクロ的背景が明るいことから、私たちはリスク資産のオーバーウエイトを選好しますが、一部の資産のバリュエーションが高いことも同時に認識しています。
株式:バリュエーションが低く、景気サイクルへの感応度が高いことから、シクリカル株と小型株を選好します。また同じ理由から、米国以外の先進国株(特に英国と内需関連の日本企業)と新興国株も選好します。
債券:債券利回りが相対的に高い水準にある中、債券も、特に保有期間が長い場合には、(スプレッドがタイトではあるものの)魅力的な投資機会を提供すると考えています。強いファンダメンタルズが多くの債券資産の下支えとなっており、このことからも、投資適格債とハイイールド債のクレジット・スプレッドが極めてタイトとなっていることが説明されます。
オルタナティブ:環境改善と金利低下に伴い、アップサイドが大きいと考えられる不動産にも、更なる投資機会があるとみています。コモディティについては、景気サイクルへの感応度に鑑み、工業用貴金属を選好します。通貨については、FRB(米連邦準備理事会)が利下げを続ける中、2025年には米ドルがいくつかの通貨に対して低下し始めると予想し、日本円や英国ポンドなどの通貨を選好します。
基本シナリオが実現しない可能性もあることから、その他のシナリオについても考えておく必要があります。
政策的ミスによって世界の成長の下振れが引き起こされるリスクがあります。例えば、最近のデータには所々弱含みが見られますが、これが米国を含む主要国の成長が持続的に減速する兆しである可能性があります。しかし私たちは、経済活動が停滞した場合、中央銀行が成長減速に歯止めをかけるべく更なる利下げを実施することで、結果として、年前半のパフォーマンスはトレンドを下回るものの、年後半にはトレンドに向かって回復していくと予想しています。
このような環境下では、米国株や長期国債など、よりディフェンシブなポジショニングを選好します。コモディティについては、株式との相関が低く、利回りの低下から恩恵を受けやすい金を選好します。通貨については、米ドルや日本円といった「セーフヘイブン」となる通貨を選好します。
世界経済が予想以上に成長する可能性があります。インフレの低下と利下げにより、ほとんどの国で「ゴルディロックス(過熱もせず冷え込みもしない、適度な経済状況)」的な環境に向かう可能性が考えられます:この場合、私たちの基本シナリオよりも多くの地域に改善が及び、これによりほとんどの主要国で、潜在成長率を上回る成長率となり、インフレ率が目標に近い水準で推移する期間が訪れる可能性があります。中国も予想以上に改善する可能性があり、そうなれば新興国市場全体の底上げが後押しされるでしょう。
このようなシナリオでは、より「リスクオン」のポジショニングを選好します。株式については、中国株を含む新興国株を選好します。債券については、ハイイールド債、新興国債、バンクローン、プライベート・クレジットを選好します。コモディティについては、景気サイクルへの感応度がより高い、エネルギーを含むインダストリアル・コモディティを選好します。通貨については、カナダドルや豪ドルなどの「コモディティ通貨」を選好します。
私たちの見通しに影響を与え得る追加的な要因がいくつかあるため、それらについても考慮に入れねばなりません。
ドナルド・トランプ米次期大統領が2025年初めに就任することが決まっており、関税や移民に関する政策の不確実性が高まっていることから、市場のボラティリティが高まる可能性があります。第1次トランプ政権で見られたように、株価は2018年および2019年の関税戦争に対してネガティブに反応しました。そして今、債券市場はインフレ上昇と財政赤字拡大の可能性に対してネガティブに反応しています。第1次トランプ政権で可決された減税措置の延長を含む、第2次トランプ政権の政策案は、長期金利の上昇圧力となる可能性があります。また成長率やインフレ率を押し上げる可能性もあり、それがFRBの政策軌道に影響を与える可能性もあります。。
9月以降、一連の景気刺激策が中国の金融市場を活性化させ、成長率上昇への期待をかき立てましたが、これは世界経済と株価にプラスの波及効果をもたらす可能性があります。最近の住宅ローン金利の引き下げは、住宅購入を促進するでしょう。政策当局が財政刺激策を実施すれば、投資家心理はより好転すると考えられます。歴史的に見て、中国の経済パフォーマンスと株式市場のパフォーマンスには、一般的に強い相関関係がありません。中国では、どこよりも政策の影響の方が大きい傾向にあります。最近の政策モメンタムによって投資家心理が更に変化しないか、引き続き注視してまいりたいと思います。
多くの地域の市場および政策当局は、成長とその下振れリスクに目を向けるようになっています。私たちの基本シナリオではありませんが、インフレが再来すれば、現在の見通しに大きな変化をもたらし、政策的緩和とその結果としての景気浮揚に対する期待を再調整する可能性があると考えられます。米国における最近の懸念材料として、賃金の伸びやISMサービス業価格指数の上昇などが挙げられます。これは、インフレが市場要因として復活するリスクを浮き彫りにしています。海上運賃などのサプライチェーン要因は、インフレを経済にもたらす可能性があります。原油供給ショックは私たちの基本シナリオを狂わせ、インフレと成長に打撃を与えるでしょう。また前述したように、トランプ政権の貿易・移民政策や成長促進政策も、インフレ方向に働く可能性があります。
主要国の、潜在成長率を上回る最近の成長は、大規模な財政支出によって牽引されてきた面もあります。現在、マクロ環境は(パンデミック期間の経済と比べて)より正常化しているにもかかわらず、財政の蛇口はほぼ開いたままとなっています。投資家は、政府のバランスシートの状態に対する懸念を強めています。とりわけここ数ヶ月の米国のタームプレミアムの上昇をみると、長期の国債利回りは、インフレだけでなく債務残高の増加に対する懸念をも示唆している可能性があります。政府が拡張的な財政政策を抑制すべく財政支出を削減すれば、2025年に期待されている再加速の度合いを制限するような、成長への逆風となるかもしれません。
来週公開予定となる私たちの2025年グローバル市場見通しで、更に詳しい内容をご確認いただければと思います。
クリスティーナ フーパー
チーフ・グローバル・マーケット・ストラテジスト
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MC2024-144
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