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今回は、前半として「基本シナリオ」についてご説明します。
急激な物価上昇を抑制するため、急速な金利引き上げを行った後、2024年にほとんどの中央銀行は、インフレからの脱却を宣言しました。しかし、世界の主要国の多くは景気減速の兆しを見せており、ユーロ圏購買担当者景気指数の低下、失業率の上昇、消費者信頼感の弱含みといった低迷の兆しが、年後半に中央銀行による利下げ実施を後押ししました。
2025年に向けて、中央銀行がインフレを抑制しつつ、主要国を緩やかな成長へと導くことができるかどうかが依然として重要な課題となっています。地政学的緊張や米国で誕生する新政権など、新旧の課題が先行きを不透明にしています。私たちは、2025年に大幅な金融緩和が世界の成長を潜在成長率まで押し戻し、中央銀行が景気後退に陥らせることなくインフレを低下させる「ソフトランディング」を達成することで、リスク資産にとって魅力的な環境が醸成されると予想しています。
2024年半ば以降、米国経済の成長軌道をめぐっては、悲観的な見方と楽観的な見方が行ったり来たりしています。所々弱含みが見られつつも、米国は底堅い成長を続けています。
2025年に向けて、米国経済は潜在成長率に近い成長を続けると私たちは予想しています。先行指標はまちまちの様相を呈していますが、特に製造業セクターの弱含みから得られる示唆は、パンデミック後の財・サービスの需要変動に鑑み、限定的なものにすぎないと考えています。最近政策変更があったものの、抑制的な金融政策環境が数四半期にわたって続き、現在に至るまで続いていることから、米国では短期的には、潜在成長率近くまでの成長率の緩やかな減速が続くと考えられます。ただし、労働市場の底堅さと全体的な家計のバランスシートの強さにより、消費とより広範な経済の継続的な成長が促され、金融環境の緩和や実質賃金の伸びの継続が、2025年に米国経済の再加速を後押しすると予想されます。
私たちは、FRB(米連邦準備理事会)が2025年に政策金利を中立金利の水準に向けて引き下げ、金利上昇からくる成長への下押し圧力を軽減しようとするだろうとみています。成長が減速の兆しを見せたとしてもFRBに更なる政策的緩和の余地があるということは、2025年の経済のモメンタムに対して前向きな背景となるでしょう。
私たちは引き続き、米国の成長率が他の先進国よりも高くなるだろうと予想しています。それは主に、良好な人口動態と移民の状況、ビジネスの力強さ、健全な生産性の伸び率などの複合的要因によるものです。
ユーロ圏の景気回復は、2023年後半の減速から回復を見せた後、停滞しているように見えます。フランスやドイツなどの主要国は、特に製造業セクターで勢いを失いつつあるように見えます。ユーロ圏は、構造的な課題や人口動態の問題が重しとなっており、米国との経済的乖離が継続的なものとなることが示唆されます。
実際、ユーロ圏の経済モデル、特にドイツの輸出主導型成長モデルは、中国との貿易摩擦の高まりや、トランプ政権の再来による米国との緊張再燃の恐れから、難しい局面を迎えています。しかし、中国経済の活性化は、ユーロ圏にプラスの波及効果をもたらす可能性が高いようです。エネルギー価格は、ロシアのウクライナ侵攻に端を発した高騰からはいくぶん低下したものの、米国やユーロ圏の過去の価格水準と比べると、依然として大幅に高くなっています。フランス、ドイツ、イタリア及びユーロ圏のその他の国々における財政再建も、成長、投資、消費への下押し圧力となる可能性があります。米国との貿易関係が悪化すれば、マインドの低下にもつながる恐れがあります。
私たちは、欧州中央銀行(ECB)の利下げサイクルにより、成長鈍化の反転が始まると予想しています。2025年に入ると、更なる利下げにより、緩やかな実質賃金の上昇も手伝って、経済成長率は潜在成長率に向けて押し上げられるでしょう。ECBは現在、緩やかな利下げサイクルを選好しているようですが、これは経済全体にとって良好とみられる一方、成長率の改善を遅らせる可能性があります。中国など世界の他の地域で良い意味でのサプライズがあれば、貯蓄超過経済(経常収支が黒字、つまり貯蓄が投資を上回る経済)であるユーロ圏の成長が押し上げられる可能性があります。
何年も成長の低迷が続いてきた英国経済は、ここ数四半期で驚くほどの回復力を見せており、私たちは慎重にではありつつも、楽観的に見ています。英国は、ユーロ圏と同様のいくつかの困難に直面しています―ロシア・ウクライナ紛争が引き金となったエネルギー価格ショックが依然として消費支出の重しとなっており―ブレグジットという独自の課題も抱えています。その他にも、世界金融危機以降、伸び悩んできた投資と生産性が、ブレグジットに関連した欧州連合(EU)との貿易/投資障壁や、(米国とは対照的に)パンデミック以降経済活動が鈍化したことにより、悪化したことなどが要因として挙げられます。経済的基盤(インフラ、ヘルスケア、教育)への投資不足がパフォーマンスを悪化させた可能性がありますが、それは英国だけではありません。
しかし、英国ではまだ上方サプライズが起きる可能性があります。今年選出された労働党政権が編成した予算は、イングランド銀行の見通しにある通り、成長率を押し上げる可能性があります(併せてインフレの上昇も見込まれていますが)。ブレグジット後のEUとの貿易関係も改善される可能性があり、そうなれば貿易のスピードが速まり、財・サービス両方への規制が緩和される可能性があります。
インフレの低下傾向が続くに従い(また実質賃金が上昇するに従い)、英国はまずまずの成長を続けると私たちは予想しています。しかし、課題も残っています:英国政府の債務負担の大きさが依然としてハードルとなっていることや、インフレが相対的により頑強との見通しがあることから、イングランド銀行が金利を比較的高く維持する必要があることなどです。いずれにせよ、利下げは英国の消費者を助け、住宅市場の活性化を後押しするでしょう。
カナダ経済も逆風にさらされており、米国経済ほど芳しくはありません。しかし、カナダ銀行が緩和を開始したことで、カナダ経済も他の主要先進国に続き、来年は景気が再加速する可能性が高いとみられます。カナダ経済は、実質賃金の改善に助けられ、世界経済の加速がコモディティ価格の上昇につながれば、更に押し上げられると予想されます。
日本ではインフレと賃金上昇が復活し、長期にわたる低インフレ体制から脱却したように見えます。多くの中央銀行とは対照的に、2024年に日銀は、インフレが進行するにつれ、引き締め姿勢に転じました。しかし、直近の引き締め政策が大幅な為替変動につながったことで、日本の輸出中心のビジネスを混乱させた面があります。しかし、日本株のバリュエーションは、米国など一部の市場と比較して、依然として魅力的な水準となっています。
私たちは、賃金上昇が消費を押し上げるにつれ、日本の景気は2025年に再加速するとみています。日銀が非常に緩やかな引き締めサイクルを継続し、他の中央銀行が緩和を行うにつれ、円高が進む可能性があります。
2024年の大半の期間、中国は消費の減速及び不動産セクターの厳しいセンチメントと闘ってきました。私たちは、2025年も不動産セクターにより、中国の消費と投資活動の力強さがいくぶん抑制されるのではないかと予想しています。
輸出の高い成長が2024年の全体的な経済成長の力強い支えとなりましたが、貿易摩擦の継続により、その成長が若干減速する可能性があります。ここ数年の成長を支えた製造業の生産能力増強も、わずかに減速する可能性が高いと考えられます。
しかし政策当局は、住宅市場や消費の支援、金融刺激策など、中国経済への政策的支援を少しずつ導入してきました。9月下旬に発表された支援内容(株式市場支援のイニシアチブを含む)は建設的で、市場の信認感を高めるのに役立っています。私たちは、景気刺激策によって景気への下押し圧力が緩和され、2025年の経済成長は小幅な減速となる可能性が高いと考えています。景気刺激策は、成長率の意外な上昇につながる可能性があります。
米国の利下げ、世界的な金融緩和、中国の景気刺激策、米ドルの緩やかな低下は、いずれも新興国の成長とパフォーマンスを幅広く下支えするでしょう。コモディティ価格は―特に中国の景気刺激策が牽引役となれば―やや上昇トレンドとなるでしょう。FRBの利下げは、特に金利がまだ非常に高く、インフレが低下しつつある新興国(ラテンアメリカ、中央ヨーロッパ、アジアなどの一部及び南アフリカ)での利下げに道を開くでしょう。
とはいえ、新興国経済には、国内動向の方がより大きな影響を及ぼすと考えられます。
クリスティーナ フーパー
チーフ・グローバル・マーケット・ストラテジスト
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