量子コンピューターの基本素子である量子ビットは、数十秒や数時間以上の長い時間が経過した後に特性が変化し、時間がたつと元の特性に戻ることを繰り返す、といった長周期での特性変化が生じることが知られています。実運用されている量子コンピューターでも、時間単位での長周期の特性変化が観測されています。量子ビットの特性が変化した状態で計算を行うとエラーが生じるため、定期的な状態の診断と調整が必要です。調整作業には数時間を要する場合もあり、量子コンピューターの利用可能時間を制限しています。高集積量子コンピューターに向けて開発が進むシリコン量子ビット素子においても長周期の特性変化が生じますが、その原因は未解明でした。本研究では、シリコン型の中でも高集積化への期待が高いFin型量子ビット素子に生じる特性変化の原因が、絶縁膜/半導体界面の欠陥であることを世界で初めて特定しました。本成果により、シリコン量子コンピューターの安定動作に向けた量子ビット素子の製造技術開発に関する指針が得られました。この技術の詳細は2024年12月7日から米国サンフランシスコで開催される国際会議「IEEE International Electron Devices Meeting 2024」で発表されます。
学会情報 学会名:IEEE International Electron Devices Meeting 2024 タイトル:Origin of Long-period Electrical Instability in Silicon Fin-type Quantum Dots 著者:H. Oka, H. Asai, K. Kato, T. Inaba, S. Shitakata, S. Iizuka, Y. Chiashi, Y. Kobayashi, H. Yui, S. Nagano, S. Murakami, Y. Iba, M. Ogura, T. Nakayama, H. Koike, H. Fuketa, S. Moriyama, and T. Mori