日本の課題 日本の課題と構造的弱点は、次のように総括できます。 ① 司令塔機関としてのデジタル庁の権限の実効性に課題が残ります。重複投資の温床となる官庁間の縦割りの弊害、遅れる行政DXやスピード感の不足は継続案件です。 ② 本来、効率性追求、人手不足を解消するはずのAIを必要とする小規模自治体での財政、デジタル格差は、行政運営の機能や継続性に影響を及ぼしています。一時しのぎの支援策ではなく、国はサステナブルな自治体運営をどうすべきか、特に地方の課題解決が急務です。 ③ マイナンバーカードの最大の課題は、安定的稼働とユーザビリティの確保。したがって、利活用率の維持促進のためヒューマンエラー解消など行政の信頼は必須です。 ④ 急増するサイバーセキュリティ・トラブル対策及び関連するリテラシー向上のための国民各層への教育訓練は不可欠です。
日本への提言 デジタル政府の最優先事項として次の2項目の提言が挙げられます。 ① 日本のデジタル政府が誕生してまだ20年余しか経過していません。進捗に差こそあれ、世界もほぼ同じ歴史を辿っています。本報告は19回に及ぶ研究調査分析の集大成ですが、19年間の時系列分析から得た貴重な歴史的変遷を評価分析しています。将来のデジタル政府像(モデル)を予見するうえで必要な施策を多面的に論述しています。確実に急成長続けるAIが人類社会に挑戦する2030年代に前倒しの“シンギュラリティ”事象を歴史的教訓から早期に学ぶべきと思います。
② 今やるべきことは、世界に類を見ない日本の少子・超高齢・人口減少社会を見据え、デジタル活用による官民連携やイノベーションの推進による行財政のコスト削減や効率化、積極的且つ最適なデジタル投資です。すなわち、直面するデジタル社会と超高齢社会の融合によって、AI政府創生へスピーディな行財政改革と市民中心の行政サービスの実装が求められます。 早稲田大学世界デジタル政府ランキングを創設した小尾敏夫名誉教授が貢献してきた国連ITU、OECD、APEC、ユネスコ、国連経済社会局など国際機関はDX、デジタル・イノベーション指向に大きく舵を切っています。本報告書が描くグローバルな未来AIデジタル社会へのチャレンジがスタートしています。
本評価モデルは研究所初代所長の小尾敏夫名誉教授によって開発され、ランキング手法が確立されました。当研究所は国際機関APECのデジタル政府研究センターも兼務しています。本研究調査では最新で、かつ最も正確な情報を得てデータ分析及び評価するために、NPO法人国際CIO学会(理事長/早稲田大学電子政府・自治体研究所研究院教授:岩﨑尚子)の世界組織であるInternational Academy of CIO傘下の提携大学を代表する専門家による合同研究調査チームを編成しています。