内田研究室では光で屈曲する結晶について2016年分子機械のテーマでノーベル化学賞を受賞したB. L. Feringa教授とも共同研究を行ってきました。今回の成果は、2004年に、龍谷大学の教員の長期海外研究員制度を利用し、内田がFeringa研究室で一年間研究してきた際に、Feringa研究室で合成した化合物の一つです。この化合物を昇華して作成した結晶は、長さ約0.5 mm、幅約10μmのサイズのブロードソード形の結晶をしています。この結晶の光で屈曲する現象は、入江教授の発表の翌年、英国王立化学会の「Chemical Communications」誌に発表していますが、その時Feringa教授から、この結晶はどの方向に曲がるのかと確認を求められました。最初は、入射光源に近づく方向に曲がるように見えましたが、一旦光源から遠ざかるように曲がり、続いて急速に接近するように曲がっていました。この結晶の屈曲メカニズムは、入江教授らの報告によるものでは説明ができません。そこで、兵庫県にある大型放射光施設SPring-8での測定を開始しました。その結果、光照射により、最初に光源から遠ざかる方向に曲がる際は、入江教授らの報告したメカニズムなのですが、そこでSCSC相転位が起こり、急速に結晶の体積が減少することで手前に大きくかつ迅速に曲がっていることが判明しました。さらに可視光を照射すると、先ほどの軌跡を逆にたどるように、二段階の屈曲を経て元の真っすぐな結晶に戻りました。