Comprehensive screening of the cell surface receptor for alpha-synuclein fibrils
【研究内容】
パーキンソン病(Parkinson’s disease: PD)をはじめとするレビー小体病(Lewy body disease: LBD)は、アルツハイマー病に次いで頻度の高い神経変性疾患(PD/LBD)です。体の動きに障害が現れる疾患で、①動作が遅くなる、②手足が震える、③筋肉が固くなる、④バランスが取れなくなる、といった病態を示します。病理学的には、構造変化により病的な線維化を生じたα-シヌクレイン(α-Synuclein: α-Syn)というタンパク質を主成分とするレビー小体(Lewy body: LB)の出現と、運動を調節する神経細胞(中脳黒質・青斑核のカテコラミン産生神経細胞)の減少を特徴とします。PD/LBD患者の脳では、線維化α-Synが神経細胞間を伝播することで病変が拡大する可能性が指摘されています。さらに、神経細胞への線維化α-Syn取り込みには、細胞表面にある膜タンパク質(α-Syn受容体)が関与する事が示唆されています。
今回、プロトセラの特許技術であるMembrane Protein Library®(MPL)法※2とBLOTCHIP®-MS法※3の組み合わせ技術によって、世界に先駆けて脳組織からの線維化α-Syn受容体の網羅的探索を実施し、複数の候補分子を同定することに成功しました。今後は、線維化α-Syn受容体候補となる膜タンパク質情報を基に、新たな医薬品開発を目指します。
マウス脳組織を破砕後、遠心分離で膜タンパク質を回収し、卵黄レシチンからなるリポソームと融合させて膜タンパク質ライブラリ(Membrane Protein Library®:MPL)を調製しました。リガンドとなる単量体および線維化α-Synを別々のセファロースに固定し、マウス脳組織由来MPLの中から各α-Synに結合する膜タンパク質を精製しました。精製物をSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動後、標的バンドを切り出し、トリプシン消化に続いてLC-MS/MS法による構造解析の結果、単量体α-Synに比較して線維化α-Synにより強く特異吸着する複数の膜タンパク質が同定されました。
プロトセラは受容体をその構造特性に関わらず人工リポソームのリン脂質二重層に再構成し、リガンド結合能を保持したままで膜タンパク質ライブラリ(Membrane Protein Library®;MPL)と呼ばれるエマルジョン溶液に転換する技術を確立し、培養細胞から組織や臓器に存在するあらゆる受容体を大量かつ安定的に供給できるようになりました。このMPL法にBLOTCHIP®-MS法を組み合わせた複合技術により、未知のリガンドと未知の受容体を包括的に探索・同定、さらに両者間の相互作用を解析することが可能になりました。