第1位は、首都大学東京の田村浩一郎教授らによるバイオインフォマティクスツール(分子系統解析ソフトウェア:MEGA)の開発に関する論文「MEGA5: Molecular Evolutionary Genetics Analysis Using Maximum Likelihood, Evolutionary Distance, and Maximum Parsimony Methods」でした。この論文は2011年(平成23年)の出版以降現在までに3万回以上もの引用を集めています。なお、MEGA の開発に関する論文は、MEGA3、MEGA4、MEGA6、MEGA7の開発についても上位20位以内に入っており研究への影響力の大きさが伺えます(以降の文章中ではこれらを除く順位で記載します)。
第2位は、名城大学の飯島澄男教授(論文発表時NEC)によるカーボンナノチューブの発見に関する論文「HELICAL MICROTUBULES OF GRAPHITIC CARBON」で、1991年(平成3年)の出版後、2万9千回以上の引用を集めています。
第3位は、京都大学の山中伸弥教授らによるiPS細胞の作製に関する論文「Induction of pluripotent stem cells from mouse embryonic and adult fibroblast cultures by defined factors」で、2006年(平成18年)の出版以降1万2千回以上の引用を集めています。この論文は2012年の山中教授のノーベル賞受賞理由として取り上げられました。山中教授らによるiPS 細胞に関する研究では、2007年(平成19年)のヒトiPS細胞の作製に関する論文「Induction of pluripotent stem cells from adult human fibroblasts by defined factors」も第4位に入りました。
第5位から第10位までは以下:
第5位は、豊田中央研究所の旭良司氏、森川健志氏らによる可視光で働く光触媒の開発に関する論文「Visible-light photocatalysis in nitrogen-doped titanium oxides」(2001(平13)年)、
第6位は、京都大学の金久實特任教授らによる生命情報データベース(パスウェイを中心とした生命情報統合データベース:KEGG)の開発に関する論文「KEGG: Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes」(2000(平12)年)、
第7位は、東京大学の田嶋文生名誉教授(論文発表時九州大学)による、進化における自然選択の有無を調べる統計手法の開発に関する論文「STATISTICAL-METHOD FOR TESTING THE NEUTRAL MUTATION HYPOTHESIS BY DNA POLYMORPHISM」(1989(平元)年)、
第8位は、大阪大学の加藤和貴准教授らによるバイオインフォマティクスツール(遺伝子配列アライメントツール:MAFFT)の開発に関する論文「MAFFT Multiple Sequence Alignment Software Version 7: Improvements in Performance and Usability」(2013(平25)年)、
第9位は、名古屋市立大学の藤井義敬名誉教授らによる肺がん治療薬の有効性研究に関する論文「EGFR mutations in lung cancer: Correlation with clinical response to gefitinib therapy」(2004(平16)年)、
第10位は、東北大学の大野英男教授らによる磁性半導体の強磁性の原理に関する論文「Zener model description of ferromagnetism in zinc-blende magnetic semiconductors」(2000(平12)年)。
平成前期に出版された論文では、3位以降に平成期全体でのトップ10とは異なる論文が見られ、第3位に一橋大学の野中郁次郎名誉教授による組織的知識創造理論に関する論文「A DYNAMIC THEORY OF ORGANIZATIONAL KNOWLEDGE CREATION」(1994(平6)年)、第4位に、名城大学・飯島教授らによるカーボンナノチューブに関する別の論文(単層カーボンナノチューブの発見)「SINGLE-SHELL CARBON NANOTUBES OF 1-NM DIAMETER」(1993(平5)年)、第5位に神戸大学元学長の西塚泰美氏による、自身が発見した酵素(プロテインキナーゼC)の機能に関する論文「INTRACELLULAR SIGNALING BY HYDROLYSIS OF PHOSPHOLIPIDS AND ACTIVATION OF PROTEIN-KINASE-C」(1992(平4)年)が入っています(表2)。
平成中期に出版された論文では、トップ5はすべて平成期全体のトップ10以内となっています(表3)。
平成後期に出版された論文では、3位以降が平成期全体でのトップ10とは異なり、第3位に、桐蔭横浜大の宮坂力教授らのペロブスカイト太陽電池の開発に関する論文「Organometal Halide Perovskites as Visible-Light Sensitizers for Photovoltaic Cells」(2009(平21)年)、第4位に理化学研究所の林崎良英プログラムディレクターらが加わるヒトゲノム解析の国際プロジェクトによるヒトゲノムの機能に関する論文「An integrated encyclopedia of DNA elements in the human genome」(2012(平24)年)、第5位にNTTコミュニケーション科学基礎研究所のMathieu Blondel氏(論文発表時 神戸大学)が加わる機械学習ツール(Scikit-learn)の開発に関する論文「Scikit-learn: Machine Learning in Python」(2011(平23)年)が入っています(第1位であるMEGA5に続くMEGA の開発論文を飛ばして順位を記載しています)(表4)。
Web of Science Core Collection は、自然科学、社会科学、人文科学の広範にわたる世界の主要学術誌(12,000誌以上)に掲載された学術論文の書誌事項、および引用文献情報を集録しているデータベースで、1900年以降に出版された7,000万報以上の論文を収録しています(2019年現在)。
大隅良典氏:「A ubiquitin-like system mediates protein lipidation」(2000(平12)年)1083回/660位
本庶佑氏:「Engagement of the PD-1 immunoinhibitory receptor by a novel B7 family member leads to negative regulation of lymphocyte activation」(2000(平12)年)2284回/156位
梶田隆章氏:「Evidence for oscillation of atmospheric neutrinos」(1998(平10)年)3605回/56位