平成29年3月15日



環境省

経済産業省



PCB廃棄物の処分期間終了が迫るなか、

全国2,147人の事業者・行政関係者が参加

~ PCB廃棄物の適正な処理促進に関する説明会、全国19都市で開催 ~



 環境省と経済産業省は、ポリ塩化ビフェニル(以下:PCB)の適正な処理に向けた国の施策に関する最新の情報を紹介する説明会を、昨年9月から本年2月にかけて全国19都市で開催しました。延べ全国2,147人の事業者・行政関係者が参加した会場では、環境省、経済産業省、産業保安監督部のほか、高濃度PCB廃棄物の処理を進める中間貯蔵・環境安全事業株式会社(以下:JESCO)から、PCB廃棄物の処分に関する説明が行われました。



 「PCB廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法(以下:PCB特措法)」の改正法が昨年8月に施行され、新たに高濃度PCB廃棄物の「処分期間」が定められました。そして高濃度PCB廃棄物の保管事業者には、処分期間の終了までに処分委託を行うことが義務づけられました。処分期間はPCBの濃度と地域、廃棄物の種類によって異なります。最も早く終了するのは中国、四国、九州、沖縄にある、高濃度のPCBが含まれる変圧器とコンデンサーで、処分期間は平成30(2018)年3月末までとされています(添付画像(1)参照)。

 高濃度PCB廃棄物は処分期間を過ぎると、事実上処分することができません。また、処分期間内に処分委託されていない場合には、行政から改善命令が出され、これに違反すると3年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金または併科が処せられます。



 今回の説明会参加者のアンケート結果によると、PCB特措法及びPCB廃棄物処理基本計画の改正内容等について「理解できた」(「よく理解できた」+「おおむね理解できた」)が80%以上、高濃度PCB廃棄物の処分手続きについて「理解できた」(「よく理解できた」+「おおむね理解できた」)も約80%と、説明会を通じて多くの方々にご理解いただきました。また、PCB使用製品の廃止やPCB廃棄物の処分委託に対する懸念事項では、約40%から「廃棄物の処理費」と回答されるなど、早期処理に向けた課題も示されました。

 今後も国として責任を持ち、事業者の皆さまのご理解・ご協力をいただきながら、PCB廃棄物の処理に向けた取組を行ってまいります。

 *詳細は環境省のPCB早期処理情報サイトをご覧下さい(http://www.env.go.jp/recycle/poly/pcb_soukishori/)。



<PCB(ポリ塩化ビフェニル)とは>

 PCBは、かつて学校や工場等で使われた蛍光灯の安定器をはじめ、変圧器やコンデンサーの絶縁油などに広く使われた化合物。昭和43(1968)年にPCBが誤って混入した米ぬか油が流通し、約13,000人に深刻な健康被害をもたらした「カネミ油症事件」をきっかけに、新たな使用は禁止されました。なお、昭和51(1976)年以前から使用されているPCBを含む変圧器やコンデンサーなどの製品(以下:PCB使用製品)は使用禁止の対象外でしたが、昨年のPCB特措法改正により処分期間終了までに、PCB廃棄物として処分委託を行うことが義務づけられました。





参考資料(1)~ PCB廃棄物の処理について

 PCB廃棄物は、PCBの濃度により「高濃度PCB廃棄物」と「低濃度PCB廃棄物」に分類されます。PCB濃度が0.5%(=5000ppm)を超えるものは高濃度PCB廃棄物として処分委託する必要があります。高濃度PCB廃棄物はJESCOにおいて、低濃度PCB廃棄物は民間の無害化処理事業者等によって、それぞれ定められた期間内に処分が行われます。

 PCB廃棄物は、JESCOの処理施設が稼働を開始した平成16(2004)年までの約30年間処理できなかったため、社会に眠っているPCB廃棄物は非常に多いことが予想されます。また、昨年まで昭和51(1976)年以前から使用されているPCB使用製品は使用禁止の対象外であったことから、長い間に渡ってPCB使用製品であることを意識せずに使い続けているケースも見られます。高濃度PCB廃棄物の処分期間終了が迫りつつある現在、事業者には早急に確認を行うことが求められています。



●高濃度PCB廃棄物の処分期間は、地域と廃棄物の種類によって異なる。

 中国、四国、九州、沖縄にある変圧器とコンデンサーは来年3月末まで。

 高濃度PCB廃棄物の処理は、北九州、大阪、豊田、東京、北海道にあるJESCOの5つのPCB処理事業所が行っています。事業所は地元関係者の理解と協力の下、担当する地域にある高濃度PCB廃棄物の処理を進めており、処理を行える期間は事業所によって異なります。そのなかでも最も早く処分期間が終了するのが北九州PCB処理事業所で、高濃度のPCBが含まれている変圧器とコンデンサーの処分期間は平成30(2018)年3月31日までとされています(添付画像(1)参照/処分期間は添付画像(2)の計画的処理完了期限の1年前に設定)。このため、北九州PCB処理事業所が担当する中国、四国、九州、沖縄にある変圧器とコンデンサーについては、来年の3月末までに処分委託を行う必要があります。



●低濃度PCB廃棄物の処分の期間は、平成39(2027)年3月末まで。

 低濃度PCB廃棄物の処理は、環境大臣が認定する無害化処理認定施設及び都道府県知事等が許可する施設で行われています。低濃度PCB廃棄物の処分期間は、全国共通で平成39(2027)年3月31日までです。なお処理事業者の詳細は、環境省のホームページで紹介しています(http://www.env.go.jp/recycle/poly/facilities.html)。



<平成40(2028)年までにPCBの適正な処分を求める「ストックホルム条約」。>

 PCBによる汚染が、PCBを使用していない北極圏などにも広がっているため、国際的な規制の取組が進められてきました。そして平成13(2001)年にストックホルムで開催された外交会議において、平成37(2021)年までのPCBの使用の全廃、平成40(2028)年までにPCBの適正な処分を求める「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)」が採択されました。我が国も平成14(2002)年に同条約に加入し、国として責任を持って取組を進めています。





参考資料(2)~ PCB特措法の改正について

 PCB特措法の改正法が昨年8月に施行されました。PCB廃棄物の確実かつ適正な処理に向けて、政府一丸となって取り組むため、今回の法改正で従来環境大臣が定めることとしていた「PCB廃棄物処理基本計画」を閣議決定により定め、この基本計画にはPCBの早期処理を達成するための三つの項目が記載されました。その一つ目が現存する高濃度PCB廃棄物と高濃度PCB使用製品をすべて把握すること。二つ目が高濃度PCB使用製品の使用をすべて終了すること。そして三つ目が高濃度PCB廃棄物が適正に処理されることです。今回の改正法ではこれらの実現に向けた措置が追加されました。



●高濃度PCB廃棄物の処分委託を処分期間内に行わなかった場合には、

 3年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金または併科が処せられ、行政が代執行。

 PCB特措法の改正法が施行され、新たに高濃度PCB廃棄物の処分期間が設定され(前参考資料(1)参照)、高濃度PCB廃棄物の保管事業者は処分期間内に処分委託を行うことが義務づけられました。なお処分期間内に処分委託されていない場合には、環境大臣または都道府県知事からの改善命令の対象となります。さらにこの改善命令に違反すると、3年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金または併科が処せられます。そして高濃度PCB廃棄物は行政による代執行によって処分され、行政はその費用を保管事業者から徴収することができます。



●高濃度PCB使用製品も処分期間内に処分委託を行わなければならない。

 PCB特措法の改正に合わせて、電気事業法の一部も改正されました。現在使用されている高濃度PCB使用製品について、処分期間内に使用を終えて処分委託を行うことが所有事業者に義務づけられました。なお処分期間内に処分委託されなかった高濃度PCB使用製品は、処分期間内に処分委託されなかった高濃度PCB廃棄物と見なされます。



●PCB廃棄物等の掘り起こし調査を実施。

 都道府県および政令市(以下:都道府県市)では、未届出のPCB廃棄物や使用製品を把握するために、 PCB廃棄物等を保有する蓋然性が高い事業者を対象に、掘り起こし調査を実施しています。都道府県市より調査票が届いた際には、調査に協力をお願いします。

 なお、調査にあたっては、電気設備を管理している電気主任技術者に必ずご相談ください。



*高濃度PCB廃棄物(高濃度PCB使用製品として使用されているものを含む)を確実に計画的処理完了期限までに処分委託できる事業者は、処分委託の期限を「特例処分期日(計画的処理完了期限と同じ日)」にすることができます。この特例を適用する場合には、JESCOに処分を委託することを約した契約書の写し等を、保管場所を管轄する都道府県市の長に届け出る必要があります。



※添付画像(3)改正法の措置のフローまとめ参照



<中小企業などが高濃度PCB廃棄物を処分する場合には、その処分料金を軽減。

また、PCB使用照明器具からLED照明への交換を促す補助金制度等もスタート。>

 中小企業や個人などが高濃度PCB廃棄物を処分する際に、その処理費用を軽減する制度が運用されています。一定の規模以下の中小企業等が高濃度PCB廃棄物を処分する場合には処理料金の70%が軽減され、個人の場合には95%軽減されます。さらに平成29(2017)年度から、PCB廃棄物の処分を行う中小企業等を対象とした、日本政策金融公庫による低金利の貸付制度が開始されます。この制度によってPCB廃棄物の処理に多くの資金が必要となる事業者は、事業を継続しながら処理にかかる費用を返済していくことができます。

 また、平成29(2017)年度より「PCB使用照明器具のLED化によるCO2削減推進事業」がスタートします。PCB使用照明器具をLED一体型器具に交換することにより、PCB廃棄物の早期処理が確実な場合には、LED一体型器具の導入と設置費用の一部が支援されます。





参考資料(3)~ PCBにまつわる歴史について

 PCBは電気機器の絶縁油をはじめとするさまざまな用途で使われていました。しかし昭和43(1968)年に発生したカネミ油症事件を契機に、その毒性が問題となり、新たな使用は禁止されました。そして、それまで使われてきたPCB廃棄物を処理するために民間事業者が処理施設の立地を試みるものの、地元の合意を得ることができませんでした。このためPCB廃棄物の処理が行えない状態が約30年間続きました。その間に学校や公共施設などでPCBを使用した蛍光灯の安定器が破裂し、八王子市内の小学校では児童の頭上にPCBが降り注ぐ事件が発生しました。これらのことからも速やかなPCB使用機器の廃棄とPCB廃棄物の処理が望まれてきました。そうした背景の下、平成13(2001)年にPCB特措法が制定。それを受けて平成16(2004)年よりJESCOによる高濃度PCB廃棄物の処理が開始されました。



※添付画像(4)PCB処理事業のあゆみ参照



●PCBは現在使用中の変圧器やコンデンサー、蛍光灯などに潜んでいる可能性がある。

 PCBは熱で分解しにくい、絶縁性が高い、燃えにくいなど優れた特性を持つことから、電気機器の絶縁油をはじめ、可塑剤や塗料、感圧複写紙など幅広い用途に用いられてきました。そうしたPCB使用製品のなかで現在まで多く使われているものが、PCBを絶縁油として使用した高圧変圧器や高圧コンデンサー、業務用・施設用の蛍光灯の安定器です。これらの製品は経年劣化により破裂を起こし、PCBが漏れ出す可能性があります。変圧器とコンデンサーは主に鉄鋼業、製造業、サービス業で使用されており、業務用・施設用の蛍光灯を保管している代表的な業種は、鉄道業、製造業、大学、石油精製業、サービス業です。PCB廃棄物は処分期間が終了すると処分できなくなります。このため処分期間の間に入念な確認が必要です。



※添付画像(5)~(7)参照



<PCBは人をはじめとする生物の体内に濃縮されやすい。>

 PCBは脂肪に溶けやすい性質をもつことから、慢性的に摂取すると体内に蓄積し、まぶたの膨張、爪や口腔粘膜の色素沈着や黒化、発疹、肝臓の肥大や機能不全などさまざまな症状を引き起こすことが報告されています。さらに自然界では食物連鎖により生物の体内に濃縮しやすいことに加えて、環境で分解されにくい、揮発性であるため大気経由で移動するなどの特徴を併せ持つため、PCBを使用していない北極圏などにも汚染が拡大しています。なお、PCBには209種類の異性体が存在し、その一部はダイオキシン類に指定されています。





情報提供元: PRワイヤー
記事名:「 PCB廃棄物の適正な処理促進に関する説明会、全国19都市で開催