老後資金は「最低限1,500万円」あればいい
以前執筆したこの記事「老後資金は「最低限1,500万円」あればいい」を読んで、
「それでは安心できない」
という疑問を持った方も多かったようなので、今回は、その理由をもっと詳しく書きましょう。
前提となっているもの…
・ 普通のサラリーマン家庭
・ 持ち家のローンが完済
・ 子供が社会人
・ 夫婦2人で老後生活を始める
2015年度に、夫婦2人が年金をもらうケースで、新規受給モデル額は22万1,500円。このご家庭がベースとなっています。
2016年の家計調査によれば
世帯主が65歳以上の家庭の支出は月24万9,063円
このケースだと世帯人数が2.46人なので、これを2人世帯に換算すると、1か月の支出は20万2,490円ということになります。
つまり、約22万円もらい、支出が約20万円ですから、基本的には年金の範囲内で生活できる人が多いということです。
しかも、70歳以上になると、食事の量が減ったり出歩くことも減る人が多いので、全体的に支出は下がります。
結果
元気なうちは支給される年金の範囲内で生活しながら、中には多少なりと貯金もできる人がいるということです。
問題点
死ぬまでずっと同じ暮らしを続けられればいいのですが、ある程度の年齢になると2人で暮らすのも大変になり、施設などに入らなくてはならないケースが出てくるということです。
この場合で、どれくらいのお金が必要になるのでしょうか?
介護の長期化なども考えると、最低1,500万円は貯めておきたい。
老後に入る最もポピュラーな施設としては、特別養護老人ホームがあります。俗に言う「特養」です。
特別養護老人ホームとは…
現在は要介護3以上で、自力で着替えができなくなったり寝返りを打つにも手伝いが必要という方が入れます。
費用は、施設・部屋のタイプにもよりますが、介護保険課を使えるので食費も含めて、月に1人9万円から13万円程度。
13万円というのは、要介護5で寝たきりになった状態の方です。
最低1,500万円必要な理由
厚生労働省のデータによると、「特養」の平均在院日数は約4年(1,405日)です。
1人9万円なら、2人で入所しても18万円ですから、年金の範囲内でなんとかなります。
寝たきりになるともう少しお金がかるので、仮に2年間は寝たきりで2人で月26万円かかったとすると、2年間で約100万円が必要になります。
年金の支給額が減っていくことが予想されます
例えば、月に5万円減っていくとしたら、そのぶんを200万円くらいは見ておかなくてはならなくなります。
また、「特養」に入れずもっと値段の高い施設に入ることになってしまったら、そのぶん月に1人5万円として、2人で500万円くらい余計にかかるかもしれません。
ここでは平均値の4年を基準にしていますが、入所期間がさらに伸びるケースも考えられます。
そのぶんを200万円とすると、夫婦2人の合計で1,000万円くらいは介護にかかるお金を見ておきたいということです。
医療
同じ保険なら、夫婦それぞれが月に100万円の治療を受けても、高額療養費制度を使えば一般的な収入なら月の自己負担は4万400円なので、200~3000万円を取っておけばなんとかなるでしょう。
結果
諸々の経費を考えて、最低でも1,500万円は用意しておかなくてはいけないということです。
老後の稼ぎ方は、いろいろある。
「最低1,500万円」というのは、普通の生活で生涯をまっとうする時に用意しておかなくてはいけないお金です。けれど、もっと贅沢をしたいと思えば、必要になるお金は際限なく増えます。
この問題は老後に「働く」という考え方を組み込めば、大きく改善されます。自分だけでなく妻にも少し働いてもらう。
前回は、海外ボランティアやファミリーサポードセンター、シルバー人材センターなどを紹介しましたが、なにも働く先を見つけて現金収入を得ることだけが働くということではありません。
畑で自給自足ライフ
畑をたがやして、自分たちの食べるものをある程度まで自分たちでつくれば、食費は少なくてすむでしょう。
また、収穫したものを近所の人たちと分かち合えば、交際費も節約できるかもしれません。
今は、都会でも「市民農園」が沢山あります。農林水産省の全国市民農園リストを見ると、東京だけでも登録されているだけで360か所の「市民農園」があります。
登録されていないものも含めると、かなりの数になるでしょう。
私の知り合いも、練馬で市民農園を借りて仕事のかたわら農作物を育てている人がいます。年間3万円ほど払って、6万円くらいの収穫があるようです。
満足して暮らせるのが一番
市民農園を始めると、同じような日曜農家が沢山いるので、畑で収穫したばかりの野菜をつまみにビールで乾杯すれば、それだけで楽しいといいます。
お金は、あればあるほどいいけれど、そんなになくても満足して暮らせる生活を考えていくことはできるのではないでしょうか。(執筆者:荻原 博子)
情報提供元: マネーの達人