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会計事務所に勤めていた時のことです。
「先日、3年前に亡くなった夫 渡辺一郎(仮名)さんの仏壇を整理していたところ、そこに夫名義の貯金証書(額面1,000万円)が、出てきたそうです。この夫の預金を解約したいのですが、どうしたらいいか」といった内容でした。
相談者の渡辺和子(仮名)さんには、子供がなく、夫の相続人は、配偶者である和子さんと夫のきょうだい・甥・姪の計7名で、夫の遺産を名義変更する際、当時、大変ご苦労されたそうです。
落ち着いたところに、和子さんの知らなかった夫の預金が今回、出てきたそうです。
和子さんにしてみれば、「夫婦で築き上げた財産を、なぜ、関係のない夫のきょうだい・甥・姪等に渡さないといけないのか」という思いです。
ところが、「夫側の血族である、きょうだい。甥・姪」にしてみると、配偶者である、和子さんが居住していた土地は、元来は、夫側の先祖代々の土地で、二人に子がいなければ「不動産は戻してほしい」との考えのようです。
「そもそも、3年前、一郎さんが亡くなった時、預金はほとんどないというので、その不動産は、配偶者の和子さんにお渡ししました。しかし、1,000万円の預貯金があるのなら、遺産分割協議のやり直し」という意見も相続人の中からでてきたのです。
当初の遺産分割協議書の作成は、別の方(司法書士)が作成されたとのことでした。さっそく当初の分割協議書を見せていただきましたが、やはり、今回、発見した貯金証書については記載がありませんでした。
ちなみに、当方がいた会計事務所では、税務調査等で相続人が知らない預貯金等が出てきた際に、相続人間でもめないように、「今後、上記記載以外の遺産が出てきたときには、〇〇が取得する。もしくは、法定割合にて取得する」とさらっと記入しておきました。
今回の場合、何故その一文がなかったのか。状況的に「別途協議する」では承諾できなかったのかもしれません。
発覚した証書は、実は、郵便局の貯金でした。
かっては、ゆうちょの貯金は税務署にバレにくいという都市伝説がありました。そこで、相続税申告においてゆうちょ銀行を申告しない方が実際あったようです。
国税の相続税の申告テェックシートでは、名指しで「郵便貯金も計上していますか」と現在も記載しています。
ゆうちょ銀行の取引状況は本人が、最寄りの郵便局に行き、「貯金等照会」を依頼すれば、貯金事務センターにて全国のゆうちょ銀行の名寄せしたものを後日、文書にて回答がくるといった流れで簡単です。
相続発生後であれば、死亡の事実と相続人の一人であることが確認できる戸籍謄本を持参し依頼をすれば、同様に調査できます。
子がいない方の戸籍による相続人の確認は大変な作業です。
そもそも、前の司法書士さんが集めていただいた戸籍も配偶者の方は紛失されていました。今は、法務局に「法定相続情報証明制度」があり、法務局で証明していただいていれば、再度戸籍を集めなくてよいことがあります。
今回のように、子がいない場合は、配偶者の方は、自分でない、相手方のきょうだいやその子たちと遺産分割の話をし、全員の合意が必要です。ところが、遺言書があれば、「合意は不要」となるのです。
しかも、「きょうだい・甥・姪」には「遺留分」もなく、有効な遺言書さえあればそれで問題は完結となります。
また、遺言書に、遺言執行者の記載もお忘れなく。尚、相続人である配偶者自身を執行者に指定するのも可能です。