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近年右肩上がりに上昇している最低賃金は、今年の10月もさらなる上昇の見込みです。
今回は雇用関係によって、労務提供をする労働者とは切り離して考えることができない最低賃金について解説します。
一般的には都道府県ごとに定められている地域別最低賃金は、最もなじみが深いものと考えます。
東京都等、全国47都道府県ごとに地域別最低賃金が定められており、端的には労働者に設定する時給額の最低ラインとなります。
多くの場合、毎年10月に発効され、1,000円を超える地域も増えてきました。
通勤手当や精勤手当、家族手当等、労働とは直接因果関係のないものは、最低賃金に含まれる手当とはなりませんので注意が必要です。
労働と関連性のある職務手当や資格手当は含まれることとなります。
しかし、労働に関係があるからといっても、所定労働時間外に労働した場合に支払われる時間外手当は含まれません。
また前述の通り、労働とは関係ないものとして、
扶養親族が年収など一定の要件を満たした場合に支給される「家族手当」や、
自宅から職場までの距離や公共交通機関の利用経路によって支給される「通勤手当」は、
最低賃金に含まれる手当ではありませんので、これらの手当を含めて最低賃金をクリアしているという理屈は成り立ちません。
現時点での最低賃金と同条件で応募している場合は、少なくとも10月以降は見直しが必要です。
最低賃金は、都道府県において雇用関係によって契約を締結する場合、最低賃金を下回って働くことができないからです。
最低賃金は強行法規と言われ、例え労使間で同意があったとしても、一定の要件とした場合を除き、最低賃金を下回る内容で賃金を支給する事はできません。
したがって、最低賃金が上昇することによって、人件費が減ると言う事は考え難く、一般的には人件費は上昇するのが通例です。
2024年度の最低賃金引き上げ目安は現時点では地域にもよりますが、おおむね50円の上昇見込みです。
2024年度については過去最高額の引き上げとの報道もあり、実際には10月に改定が実施されます。
例えば扶養の範囲内で働くパート労働者については、扶養の範囲内での収入を維持するために、労働時間を減らす動きに転ずるものと推察されます。
そのため、パート労働者を多く採用している職場では、人手不足に陥る可能性もあり得ます。
そのために正社員へのしわ寄せがあり、正社員の時間外労働時間数が増えてしまうと言ったことも想定されることから健康管理も重要な問題です。
テレワークを行なう場所がどこであったとしても、最低賃金についてはテレワークを行なう労働者が所属する事業場がある都道府県の最低賃金が適用されることとなります。
一例として東京都の企業に所属する労働者が、千葉県の自宅でテレワークを行う場合、千葉県ではなく、東京都の最低賃金が適用されると言うことです。
テレワークではないものの、本社と実際の職場が異なる場合はどのように考えるべきでしょうか。
例えば本社は東京都で、職場は千葉県の支店で働いている場合は、千葉県の最低賃金が適用されることとなりますので注意が必要です。
最低賃金は今後も上昇していくことが見込まれます。
その場合、パート労働者の就労調整によって正社員の労働時間が増えてしまう問題は今後も続くことが予想されます。
その場合、新たな採用で人員を確保するのか、正社員転換を目指してもらうのか選択肢はいくつかありますので、長期的な視点で判断していくことが重要です。
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