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まず典型例として、被保険者の資格を喪失するのは「会社に使用されなくなった時」が挙げられます。
例えば解雇や退職、事業所の廃止等が契機となり、事実上の使用関係が消滅することによって、被保険者資格の喪失要件を満たすと考えられます。
他方、誤った取り扱いも散見されますが、病気休職の場合は、一時的に病気への罹患等が引き金となり、労務提供ができていないに過ぎず、労働契約自体が消滅しているわけではありませんので、社会保険の資格喪失事由にはあたりません。
そして、今回のように逮捕や拘留された場合はどうなるのでしょうか。
もちろん、会社の就業規則の内容にもよりますが、逮捕や拘留中であっても直ちに退職扱いとしない場合は、使用関係がなくなっているとは言えません。
ただし、事実上労務提供はなく、有給休暇の申請もできない(意思表示の受領も困難でありそもそも労務提供できる可能性がない)ため、給与支給がゼロになります。
そうなると、社会保険料の給与天引きができなくなるという問題に直面します。
そこで、健康保険法第158条に保険料徴収の特例の条文があります。
内容としては、刑事施設、労役場その他これらに準ずる施設に拘禁されたとき保険料は徴収されないという内容です。
ただし、同月中に該当しなくなったときは通常通り保険料は発生します。
健康保険法では前述の通り「特例」的な取り扱いがありましたが、厚生年金保険法上ではそのような「特例」的な取り扱いはありません。
「健康保険法第118条第1項該当・非該当届」という届け出があり、上記の特例に該当する場合に届出する届書となります。
すなわち、「健康保険」に限った届出と言うことです。
保険料が発生しない特例としては、育児休業中や産前産後休業中については健康保険、厚生年金の両制度で制度的な相違はなく、共に保険料は発生しません。
そして、保険料が発生しない期間中についても、年金額の減額や保険証が使えなくなる等のデメリットもありません。
健康保険料については保険料がかからなくても、厚生年金保険料は発生します。
もちろん、70歳以上であればそもそも厚生年金は資格喪失しており、保険料は発生していませんが、そのようなケースばかりではなく、どのようにして保険料を徴収するかを検討しておく必要があります。
また、逮捕や拘留は事前にわかるというケースはあまり想定し難く、突発的に起こることのほうが多いと言えます。
逮捕、拘留中はそもそも健康保険を使うことができず、国の負担で医療を受けることとなります。
ただし、逮捕、拘留中であっても、「被扶養者」は(加入者とちがい、逮捕・拘留されているわけではありませんので)旧来通り健康保険の利用は可能ですが、加入者が逮捕、拘留によって解雇や退職扱いとなった場合は使用関係がなくなるために、健康保険は利用できません。
他方、国民健康保険の場合はそれぞれの地方自治体によって取り扱いが異なります。
一般的には世帯主がとりまとめて保険料を納付することとなっているため、保険料徴収事務がどのようになるのか(請求自体されないのかあるいは追って調整がされるのか)確認が必要です。
世帯主が逮捕、拘留された場合、世帯主の変更等の手続きが必要となることも考えられ、それぞれの地方自治体に確認が必要です。(執筆者:社会保険労務士 蓑田 真吾)
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