- 週間ランキング
農地は負の財産? 空き家の実家を相続した長男と、農地を相続した長女の10年後
「住宅取得資金贈与の非課税贈与特例」による贈与は、贈与税にも相続税にも加算されませんが、遺産分割時にもめごとの種となる可能性があります。
一般に、相続人への住宅資金贈与は遺産の前渡し(特別受益)とみなされ、何年前の贈与であったとしても、遺産に贈与分を加算したうえ、相続分を調整することになります。
もちろん生前贈与は「お互いさま」であったり、それぞれの事情をくみして、特別受益についてあえて主張しなければ、遺産分割はどんな分け方でもいいのです。
しかし、相続人間でもめてしまった場合は、相続税上の持ち戻しとは関係なく、民法上は、何年前の贈与(特別受益)でも対象となります。
筆者は会計事務所に長年勤務していたのでわかったのですが、税務署が行う相続税調査において、故人の生前贈与は1番の調査ポイントのようで、故人の通帳の履歴は必ず確認作業が行われていました。
住宅資金贈与がありながら期限内までに無申告だった場合、非課税は適用できず、その贈与は暦年課税の扱いとなり、高い贈与税及び無申告加算税に延滞税がかけられます。
贈与税の無申告は、相続が発生し相続税の調査で発覚していました。
相続税では、3年以上前の暦年贈与なら当然加算対象ですし、形式的に名義を変えただけなら名義預金(課税財産)として何年前のものでも加算対象です。
相続時精算課税を選択していれば、これも必ず加算です。
税務署には、隠せません。
では、「故人から受けた贈与」について、自分(贈与を受けた人)以外の相続人は、税務署に開示請求できるかというと、
のみ、請求できます。
つまり、暦年贈与であれば3年(改正後~7年)までと、相続時精算課税であれば開示されますが、遺産分割で特別受益の対象になる住宅取得資金贈与、暦年贈でも3年超(~7年超)前の贈与は開示されません。
なぜなら、相続税上は加算対象でないからです。
来年から始まる新・相続時精算課税制度は、毎年110万円の基礎控除があり、こちらを選択される方が多くなるように思います。
しかし前記の「贈与税の開示請求」の対象となるため、相続時精算課税制度適用分については、他の相続人にも確認ができるわけです。
私見ですが、親から贈与を受けた場合、あえて他のきょうだいに言う必要はないと思います。
ただし、聞かれたら正直に話すのがいいかと思います。
ここで隠そうとすると、信頼関係も無くなる上、相続時に発覚する可能性は高いです。
余談ですが、筆者は遺言執行する際ある相続人から、他の相続人の取得分を「あえて言わないでください」と言われたことがあります。
なんとなく、その気持ちわかるような気がしました。(執筆者:FP1級、相続一筋20年 橋本 玄也)
【贈与税対策】節税目的なら現金以外の財産の贈与するのも選択肢 株式と不動産の贈与税評価額の計算方法は
【2024年から】マンション節税が見直し 評価方法の変更による相続税への影響は
【お祝い金の贈与税】同じ金額でも課税されない贈り方、受け取り方