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老齢基礎年金を60歳から繰上げ受給する方と、75歳から繰下げ受給する方との年金額の差
生活保護の申請手続きを行うと原則的に、次のような申請者の3親等内の親族に対して、扶養照会(支援できるか否かの問い合わせ)という文書が、福祉事務所から郵送で送られます。
1親等:父母、子
2親等:兄弟姉妹、祖父母、孫
3親等:曾祖父母、曾孫、甥・姪、叔父・叔母
この扶養照会が送付された場合、必要事項を記入して返送する必要があるため、親族に対して負担がかかります。
ただ扶養照会は支援できるか否かの確認であり、支援を強制するものではないため、支援できないと記入して返送すれば、手続きが終わる場合が多いのです。
また収入や勤務先などの書きたくない項目は、未記入で返送しても構わないようです。
それでも返送したくない場合には、扶養照会への回答は強制ではないため、放置したままでも良いのです。
扶養照会の返送がなかった時には、支援する意思がないと見なして、申請手続きを進める場合が多いようです。
なお厚生労働省は2016年に調査を実施した時に、扶養照会が金銭的な支援につながった割合は、1.4%程度と算出しています。
こういったデータから推測すると、ほとんどの親族は支援できないと記入して返送している、または扶養照会を返送していない可能性があります。
日本年金機構は国民年金の保険料を納付しない方に対して、原則的には次のような順番で文書を送り、自主的な納付を求めるのです。
催促状→特別催告状(封筒の色は信号と同じように「青色→黄色→赤色」に変わる)→最終催告状
最終催告状を送付しても納付がなかった場合には、自主的な納付を求める段階から、強制徴収の段階に移るのです。
具体的には保険料の納付期限を指定し、未納者に対して督促状という文書を送ります。
この中に指定された期限までに納付がなかった場合には、差押予告通知書という文書を送ったうえで、未納者の給与の一部や、財産(預貯金、不動産、自動車など)を差し押さえるのです。
日本年金機構は「控除後所得(年収から必要経費などを引いたもの)が400万円以上、かつ未納月数が13か月以上」という基準に該当する方に対して、強制徴収の取組を2014年度から強化しました。
この基準は次のように推移しているため、強制徴収の対象になる方は以前より増えているのです。
控除後所得が400万円以上、かつ未納月数が7か月以上
控除後所得が350万円以上、かつ未納月数が7か月以上
控除後所得が300万円以上、かつ未納月数が13か月以上
控除後所得が300万円以上、かつ未納月数が7か月以上
厚生労働省の発表によると、2022年度の国民年金の納付率は76.1%となり、11年連続の上昇となりました。
このように納付率が改善した理由のひとつとして、2014年度以降の強制徴収の強化が挙げられているのです。
なお上記のような控除後所得と未納月数は、強制徴収の取組を強化する方の基準であり、強制徴収するか否かを決める基準ではないため、基準に満たない方に対しても、強制徴収が実施される場合があります。
国民年金の保険料は配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある方を含む)や世帯主が、連帯して納付する義務があります。
そのため国民年金の保険料を未納にしていた場合には、配偶者や世帯主が保有する財産なども、差し押さえの対象になるのです。
また未納にしていた国民年金の保険料に加えて、納付期限(納付対象月の翌月末日)の翌日から、納付日の前日までの日数を元にして算出した、延滞金も徴収されるのです。
こういった点から考えると、生活保護の申請よりも国民年金の未納の方が、親族に対して負担がかかると思うのです。
失業や収入の低下によって、国民年金の保険料を納付するのが難しくなった時の制度としては、
があります。
また経済的な理由などによって、国民年金の保険料を納付するのが難しい20歳以上の学生には、学生納付特例という制度があります。
所定の申請手続きを行って、これらの免除などを受けておけば、強制徴収の対象にはならないため、親族に対して負担をかけないのです。
免除などを受けるための申請手続きは、住所地にある市役所の窓口などで行いますが、ここまで足を運ぶ時間的な余裕がない場合には、必要な書類を郵送すれば良いのです。
マイナンバーカードを保有している方であれば、マイナポータルにログインして、電子申請で免除などを受けるという方法もあります。
こういった申請手続きを忘れてしまい、過去に未納期間がある場合、申請時点から2年1か月前までなら、さかのぼって免除などを受けられるのです。
また督促状が送付される前の段階であれば、分割納付に応じてもらえる場合があるため、早めに行動した方が良いと思います。(執筆者:社会保険労務士 木村 公司)
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