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理由はいくつもありますが、ここでは2つ紹介します。
顧客からどちらにするか問われた銀行員が、繰り上げ返済でなく運用をすすめたため、結果的に損をした顧客から苦情になった事例を聞いたことがあります。
運用が好調なら、結果が違ったかも知れません。
繰り上げ返済のために準備したお金である場合、銀行員は(自分の身を守る意味で)運用はすすめないものです。
繰り上げ返済をする場合、実際に返済で得られる効果は現実のもの、つまり繰り上げ返済は確実です。
投資や運用は元本保証ではなく、また当然と言えば当然ですが利回りやキャピタルゲイン(売却益)なども、すべて確定しているものではありません。
繰り上げ返済は確実だが、運用は不確実なので、銀行員としては確実な方をおすすめするのです。
不確実とは言いましたが、それだからこそ投資や運用の妙味もあるわけで、銀行員として投資や運用を全否定するつもりはありません。
繰り上げ返済の効果をシミュレーションで見てみましょう。
純粋に効果を測るため、
繰り上げ返済して期間(返済回数を減らす)という方法です。
毎回返済額を減らす、回数はそのままという方法もあります。
繰り上げ返済をいつ、いくらするかは人それぞれですので、自由にシミュレーションしてください。
上記の前提条件で、まったく繰り上げ返済しなかった場合は以下のようになります。
このローンが、繰り上げ返済によってどうなっていくでしょうか?
Mizuho Bank, Ltd.「みずほ住宅ローン金利一覧」
銀行のサイトなどで繰り上げ返済シミュレーションも多くありますので、自分に合ったものを探してみるのも良いでしょう。
毎月1万円積み立てて、そのまま1年分の12万円を繰り上げ返済すると、返済回数では1回の短縮にとどまりますが、それでも利息は減少します。
効果は決して小さくないと言えます。
100万円以上繰り上げ返済すると、効果もより大きくなることがわかります。
繰り上げ返済の効果も相当大きく実感でき「返しがいがある」と言えます。
シミュレーション結果から、繰り上げ返済の効果を一覧表で比較してみましょう。
シミュレーション結果 | 残り返済回数(メリット) | 減少する利息額(メリット) |
繰り上げ返済しない場合 | 300回 | ー |
毎月1万円 → 全額繰り上げ返済 | 299回(▲1回) | ▲48,289円 |
毎月10万円 → 全額繰り上げ返済 | 282回(▲18回) | ▲467,003円 |
毎月30万円 → 全額繰り上げ返済 | 246回(▲54回) | ▲1,299,416円 |
住宅を購入する際にローンを組んだ場合に、そのローンの年末残高の0.7%をその年の所得税の額から差し引くのが住宅ローン減税(住宅借入金等特別控除)です。
繰り上げ返済して期間を短縮したために、住宅ローン減税を受けられなくなる可能性もありますので、注意が必要です。
参照:財務省
団体信用生命保険は、住宅ローンの返済途中で借りている人が死亡または高度障害状態になった場合、生命保険でローンの残債を立替払いしてもらえる仕組みです。
保険料は毎月の返済に含まれて分割払込しているもので、ある意味「自分に万一のとき、住宅ローンが全額返済できる保険に加入している」とも言えます。
といった口コミを見受けますが、ある点では一つの考え方でしょう。
シミュレーション結果を比較したとおり、より多く繰り上げ返済すれば効果も大きくなると言うことがわかります。
例えば360万円を返済した場合の利息減少効果は約130万円です。
もちろんこれは最終回までトータルしてのメリットなので、繰り上げ返済した瞬間に130万円が戻ってくるわけではありません。
しかし、これはゆるぎない事実であり、投資と比較する大きな材料となります。(執筆者:銀行員一筋30年 加藤 隆二)