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贈与した認識はなくても、贈与税の課税対象となってしまう3つのケース
主には相続税の節税目的で生前贈与をするケールが多いですが、亡くなる前3年以内の生前贈与については、基本的に相続税の節税対策にはなりません。
これは、租税回避行為防止の観点から設けられた「持ち戻し」という制度で「相続税の課税計算上、亡くなる前3年以内の生前贈与についてはなかったものとされてしまう」というものです。
もちろん実際には財産の移転はおこなわれていますが、あくまでも課税計算上こういう扱いになってしまうという話です。
亡くなる前3年以内に贈与された金額は相続税の課税対象財産に戻されて相続税が計算されてしまうのです。
どのような生前贈与がこの「持ち戻し」の対象になるか、その判断基準は、
贈与税が課された生前贈与だけでなく、暦年課税制度の非課税枠110万円以内の生前贈与もこの「持ち戻し」の対象になります。
余談になりますが、この亡くなる3年前という期間が先般の令和4年度税制改正大綱で10年に延長されるのではという噂がありましたが、今回はその改正は見送られました。
誰に生前贈与したものかが問われ、ここが注意すべき点です。
文言だけでは誰が対象で誰が対象でないかが分かりにくいです。
具体的には、法定相続人(養子縁組した人や代襲相続した孫を含む)と受遺者(遺言で財産の受け取りを指定された人)です。
相続放棄をした人や遺贈放棄をされた人は対象外となります。
忘れてはならないのが死亡保険金の受取人が対象となることです。
上述の判断基準に該当すれば「持ち戻し」の対象になるのですが、なかには該当しても「持ち戻し」の対象にならない生前贈与があります。
それは、下記になります。
〇 婚姻期間20年以上のご夫婦間での自宅の贈与などをおこなう「おしどり贈与」
〇 直系尊属(父母や祖父母など)から贈与された非課税の適用を受けた住宅取得等資金
〇 直系尊属(父母や祖父母など)から一括贈与された非課税の適用を受けた教育資金
〇 直系尊属(父母や祖父母など)から一括贈与された非課税の適用を受けた結婚・子育て資金
「特別受益」とは、複数の相続人がいる場合で一部の相続人だけが被相続人から生前贈与などで特別に受け取った利益があることです。
この特別受益に認定された場合、遺産分割上公平の観点から特別受益分は「持ち戻し」されることになります。
上述の相続税課税上の「持ち戻し」ではなく、遺産分割上の「持ち戻し」です。
孫への生前贈与などが特別受益に該当するかどうかが問題となるケースが考えられますが、その判断は一般人には容易ではありません。
故人にとっては愛情からおこなったものでしょうから、それが遺産分割協議の難航を招いては皮肉なものになってしまいます。
そうならないために事前に確認なり、了承を取っておく必要があるかもしれません。(執筆者:CFP認定者、1級FP技能士 小木曽 浩司)
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