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2022年に改正予定の在職老齢年金 年金額が支給停止される条件を詳しく解説
国民年金の保険料の納付が免除、または猶予される制度は、次のような4種類に分かれております。
1級か2級の障害基礎年金を受給している方や、生活保護法による生活扶助を受けている方などが、所定の届出をすると受けられる免除になります。
法定免除を受けた期間には国庫負担(税金の投入)があるため、国民年金の保険料を納付した場合の「2分の1」として、老齢基礎年金の金額に反映されるのです。
失業や収入の低下によって、国民年金の保険料の納付が難しくなった方が所定の申請をすると、申請免除(全額免除、4分の3免除、半額免除、4分の1免除)や、納付猶予を受けられます。
また納付猶予の対象になる50歳未満の方が、審査の順番を指定しないで免除申請を行うと、「全額免除 → 納付猶予 → 4分の3免除 → 半額免除 → 4分の1免除」の順に審査されます。
申請免除には国庫負担があるため、
・ 全額免除は保険料を納付した場合の「2分の1」
・ 4分の3免除は「8分の5」
・ 半額免除は「8分の6」
・ 4分の1免除は「8分の7」
として、老齢基礎年金の金額に反映されます。
しかし納付猶予には国庫負担がないため、これを受けた期間は老齢基礎年金の金額に反映されません。
国民年金の保険料の納付が難しい学生の方は、(2) の申請免除や納付猶予ではなく、学生納付特例を受けることになります。
学生納付特例は納付猶予と同じように国庫負担がないため、これを受けた期間は老齢基礎年金の金額に反映されません。
所定の届出をすると、出産予定日または出産日が属する月の前月から4か月間の、国民年金の保険料の納付が免除されます。
産前産後期間の免除を受けた期間は、保険料を納付した場合と同じ取り扱いになるため、(1) ~ (3) と違って老齢基礎年金は減額しません。
以上のようになりますが、これらを受けた期間は共通して、老齢基礎年金を受給するために必要となる、原則10年の受給資格期間に反映されます。
一方で老齢基礎年金の金額に対する反映は、国庫負担の有無によって、かなりの違いが生じるのです。
ただ (1) ~ (3) を受けた各月から10年以内に、国民年金の保険料を追納(後払い)すれば、老齢基礎年金の減額はなくなるのです。
20歳から60歳までの間に、公的年金(国民年金、厚生年金保険)の保険料の未納期間が1月もない場合、満額の老齢基礎年金(2021年度額は78万900円)を、原則65歳から受給できます。
つまり40年(480月)で満額になるため、未納期間が1月増えるごとに、1,626円(78万900円÷480月)くらい老齢基礎年金が減ってしまうのです。
逆に言えば公的年金の保険料を1月納付すると、1,626円くらい老齢基礎年金が増えるのです。
また老齢基礎年金を1,626円くらい増やすために必要となる、1月分の国民年金の保険料は、2021年度額で1万6,610円になります。
この1万6,610円を取り戻すために必要な期間は、約10年(1万6,610円÷1,626円=10.2152…)が目安になります。
老齢基礎年金や国民年金の保険料の金額は、将来的には変動していくと思いますが、現状ではこのように老齢基礎年金の受給開始から、約10年で元がとれるのです。
追納する時の国民年金の保険料は、「当時の保険料額+加算額(免除などの翌年度から3年度目以降に追納する場合)」になるため、一律に1万6,610円ではないのですが、この金額だと仮定すると、どのくらいで元がとれるのかがわかります。
例えば納付猶予や学生納付特例を受けた期間は、上記のように国庫負担がないため、1万6,610円の保険料を追納すると、1,626円くらい老齢基礎年金が増えます。
そのため約10年(16,610円÷1,626円=10.2152…)で、元がとれるとわかるのです。
一方で法定免除や全額免除を受けた期間には、上記のように2分の1の国庫負担があるため、国民年金の保険料を追納しなかったとしても、813円(1,626円÷2)くらいは老齢基礎年金の金額に反映されます。
逆に言えば1万6,610円を追納しても、813円くらいしか老齢基礎年金は増えないため、元をとるまでに約20年(1万6,610円÷813円=20.4305…)かかるのです。
もうひとつ例を挙げると半額免除を受けて、8,310円の国民年金の保険料を納付した期間は、8,300円(1万6,610円-8,310円)を追納すると、407円くらい老齢基礎年金が増えます。
そのため元をとるまでに、約20年(8,300円÷407円=20.3931…)かかるのです。
このように納付猶予や学生納付特例は、約10年で元がとれるのに対して、法定免除や申請免除(全額免除、4分の3免除、半額免除、4分の1免除)は約20年かかるため、前者の追納を優先した方が良いのです。
毎年誕生月(1日生まれは誕生月の前月)になると日本年金機構から、保険料の納付実績や年金の見込額などが記載された、ねんきん定期便が送付されます。
ただ節目年齢(35歳、45歳、59歳)以外の、ハガキ形式のねんきん定期便には、直近1年間の国民年金の納付状況しか記載されていないので、納付猶予や学生納付特例を受けたのが数年前だと、これらを受けた時期がわからないのです。
一方で節目年齢のねんきん定期便や、ねんきんネットを見てみると、すべての期間の国民年金の納付状況が記載されているため、納付猶予や学生納付特例をいつ受けたのかが、わかりやすいのです。
またねんきんネットでは、追納が可能な月数が表示されるため、納付猶予や学生納付特例を受けた期間が、追納が可能な10年以内にあるのかを、自分で調べる必要はありません。
そのため追納を検討している方は、節目年齢のねんきん定期便や、ねんきんネットを開くところから、始めてみるのが良いと思います。(執筆者:社会保険労務士 木村 公司)
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