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とにかくたくさんのフォロワーがいる「羊の目。」さんは、だいたいいつも腹痛を起こしているらしく、勝手に親近感がわく。もうそれだけで応援したい。
そんな「羊の目。」さんが著作の『スキありオムライス』が今話題だ。
赤い表紙に黄色い帯。どことなくオムライスっぽい配色。帯には大きく「かわいすぎてズルい。」読了後の感想としては、ほんと、まさに、それ。
内容は、数組のカップルの胸キュン短編集で、「こんな青春してみてー!」と、つい叫んでしまいそうになる。さっきまでくすっと笑えていたはずなのに、いつの間にか静かに涙をながしている。好きな人のこととなるといつもより少し胸が躍ったり、好きな人の前ではちょっとかわいい子ぶっちゃったり。そして切なくなったり。その気持ちはなんとなく思い当たるところがある。きっと誰でも。
私が特にお気に入りの部分がある。Chapter3の「いろんなふたり」だ。いろんなふたりが何組かでてくるのだが、その中で結婚して50年の老夫婦の物語がある。長い年月をかけた夫婦の愛と信頼がなんともかわいく、美しく、そして切ない。
完全に余談であるが…。先日、私の祖父が亡くなった。いつも背筋が伸びていて、背筋が曲がっている私はよく叱られた。亡くなる前3年ほど癌と闘っていたが、どんなに苦しくても、祖父はいつも背筋が伸びていた。そんな祖父には甘えん坊の妻がいた。私にとっての祖母だ。いつも祖父に甘え、寄りかかり、自分では何もしないなかなかわがままな祖母だったが、祖父には大切にされていた。祖父が亡くなったとき、私が一番心配だったのは祖母だった。今まで祖父に寄りかかっていた祖母は支えてくれる人がいなくなって倒れてしまわないかと。だが、今、祖母は予想に反してとてもしっかりしていて、自分で行動をするようになった。きっと「しっかりしなきゃ」という気持ちもあるだろうが、私が今まで見ていた祖母は、祖父の前での祖母だったのだと思った。一方的に寄りかかっていると思っていた祖母は、頼ることで祖父を支え、祖父は、頼られることで背筋を伸ばしていたのだと、やっと気が付いた。
と、前置きが長くなってしまったが、Chapter3の「いろんなふたり」を見たとき、そんなことを思い出しながら涙が止まらなかった。こんな老夫婦になりたい。…まだ夫すらいないけど。
なぜ本書が「スキありオムライス」というタイトルなのか。ぜひ手に取って確認してみてほしい。ふへへっと気持ち悪い笑みを浮かべることは必至なので電車で読むことはお勧めしない。男はきっとこんな女に弱いんだろうなぁ。なんて、初めは別世界のように思っていたが、意外と、等身大の恋愛をしている。みんな必死になって恋愛している。きっとあなたも大切な人の前では「かわいすぎてズルい!!!」
(実業之日本社 コンテンツ・ライツ本部 鎌倉 楓)
『スキありオムライス』 羊の目。 著 1000円+税 実業之日本社
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