*15:06JST クオールHD Research Memo(6):2025年3月期は売上高、営業利益、経常利益で期初計画を据え置き ■業績の動向

3. 2025年3月期の業績見通し
クオールホールディングス<3034>の2025年3月期の連結業績は売上高で前期比50.0%増の270,000百万円、営業利益で同80.2%増の15,000百万円、経常利益で同64.2%増の15,200百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同2.4%増の5,000百万円を計画している。中間期に特別損失を計上した影響で、親会社株主に帰属する当期純利益は期初計画から700百万円下方修正したものの、売上高、営業利益、経常利益は据え置いており、過去最高業績を大幅に更新する見通しだ。

中間期の進捗率は売上高で46.2%、営業利益で40.6%とやや低い水準だが、薬局事業については季節要因で下期に収益が偏重する傾向にあることや、2024年12月にAG医薬品の新製品を3つ発売する効果で第一三共エスファの収益が下期に一段と拡大する見込みとなっており、新製品の販売が想定通りに推移すれば通期業績計画の達成は可能と弊社では見ている。第一三共エスファの業績は売上高で825億円、営業利益で70億円、当期純利益で48億円を見込んでいる。のれん償却額9.1億円(10年定額償却)が営業利益から減算されるほか、少数株主持分利益23.5億円(少数株主持分比率49%)が親会社株主に帰属する当期純利益から減算されることになる。

(1) 薬局事業
薬局事業の業績は売上高で前期比5%程度の増収、営業利益で同10%程度の増益を見込んでいるものと思われる。下期は売上高で6%程度の増収、営業利益で26%程度の増益となる計算だ。業績前提となる新規出店は、自力出店とM&Aで合わせて50店舗を見込んでおり、中間期までの進捗からすると達成可能な水準と見られる。下期の処方箋枚数は前年同期比5%程度の増加、処方箋単価は若干の上昇を想定している。2024年10月の処方箋枚数は前年同月比6.1%増、調剤報酬売上は同7.2%増と順調に推移しており、売上高については達成可能な水準と見られる。一方、利益面では仕入コスト高が続くなかでいかに経費などのコスト効率化、IT活用による業務効率の向上※を進めることができるか、また利益に直結する調剤技術料単価を引き上げていくことができるかが計画達成の鍵を握ると弊社では見ている。

※ AI-OCRの導入で処方箋入力作業の自動化による薬剤師の生産性向上に取り組んでいるほか、自動精算機の導入で会計の待ち時間短縮を図るなど、顧客サービスの向上に取り組んでいる。

2024年10月〜11月の出店実績としては、自力出店で2店舗を開局した。このうち1店舗はKDDIの協力を得て開局した同社初のオンライン薬局「クオールどこでも薬局」(埼玉県)となる。手持ちのスマートフォンやタブレットなどを利用して、自宅など場所を選ばずオンラインで薬剤師からの服薬指導を受け、処方薬の自宅などへの配送または薬局での受取を選べるサービスを提供する。薬局DXの取り組みの一つとなり、開局後の状況は好調のようだ。同社では、新たな処方箋の獲得ルートとして期待しており、各都道府県に1店舗展開していくことを視野に入れているようだ。また、同社は2024年7月にAmazonが提供するオンラインサービス「Amazonファーマシー※」を「クオール薬局港北店」(神奈川県)に導入した。短期的な業績への影響は軽微だが、薬局DXの知見を蓄積することが目的となっている。

※ 「Amazonファーマシー」は、顧客がAmazonショッピングアプリ上の自身のアカウントから「Amazonファーマシー」に登録されている薬局で薬剤師によるオンライン服薬指導を受けたのちに、処方薬を自宅など指定の住所に配送、または薬局の店舗で受け取ることができるサービス。電子処方箋の受付のみに限定している。

(2) BPO事業
BPO事業のうちCSO事業については需要の強いオンコロジー分野を中心にCMRの採用・育成を強化していくことで増収増益を目指す。CMR数については2025年3月期末で750名と前期末の約620名から1.2倍に増強することを目標としている。一方、医療系人材紹介派遣事業についてはドラッグストア向けを中心に需要が旺盛なことから、2025年3月期も2ケタ増収増益が続く見通しだ。

(3) 製薬事業
製薬事業のうち、藤永製薬については2025年3月期も売上高は前期比横ばいの見通しだが、利益面では円安が継続するなかで輸入原材料のコスト高により減益が続くと見ている。ただ、売上規模が10数億円と大きくないので全体の業績に与える影響は軽微と見られる。

一方、第一三共エスファの2025年3月期の業績見通しについては、売上高で前期比14%増の825億円、営業利益で同9%増の70億円を見込んでいる。2024年6月に発売した「ゾニサミドOD錠」の貢献が続くほか、同年12月にAGで3つの新製品※を投入する効果が大きい。なかでも、「リバーロキサバン錠(先発品名 イグザレルト(R)錠)」及び、「リバーロキサバンOD錠(先発品名 イグザレルト(R)OD錠)」は、先発品の国内市場規模が700億円を超えており、同社のなかでも主力製品の1つとして育つ可能性のある期待製品として注目される。また、コスト面では原価率の改善施策として製品ごとの価格政策の見直しや国内の生産委託先との交渉、卸政策や流通経費の見直しに取り組んでおり、通期での増益要因となる。さらに、販管費についてもすべての経費をゼロベースから見直す方針を打ち出しており、2026年3月期以降の収益性向上に寄与するものと期待される。

※ 「リバーロキサバン錠(先発品名 イグザレルト(R)錠)」、「リバーロキサバンOD錠(先発品名 イグザレルト(R)OD錠)」、「ロキソプロフェンNaテープ(先発品名 ロキソニン(R)テープ)」、ヒドロキシクロロキン硫酸塩錠(先発品名 プラケニル(R)錠)」を発売する。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)


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情報提供元: FISCO
記事名:「 クオールHD Research Memo(6):2025年3月期は売上高、営業利益、経常利益で期初計画を据え置き